普賢岳をはるかに望む絶景の畑の中で、産直品のじゃがいもは育てられています。微生物をたっぷり含んだこだわりの土づくりと温度や湿度の管理。生産者の荒木隆文さんは、今日もおいしいじゃがいも作りに励んでいます。
[生産者インタビュー]
長崎県南島原市
供給センター長崎 生産者 荒木 隆文さん
山と海に囲まれたのどかな畑。荒木さんの農場は、普賢岳を望む南島原市にあります。普賢岳の栄養たっぷりの火山性の土壌は、農作物の栽培にぴったり。いかにもおいしい野菜が育ちそうな農場で、荒木さんは数種類のじゃがいもを育てています。
じゃがいもの収穫は、冬に植えて春から初夏にかけて収穫する“春じゃが”と、秋に植えて冬に収穫する“秋じゃが”の年2回。春は、煮崩れがしにくい『ニシユタカ』。秋は、甘みがあって柔らかい『アイユタカ』や、ほくほくとした果肉がサラダやコロッケなどにぴったりの『出島』など、さまざまなじゃがいもを育てている荒木さん。「最近は、じゃがいもにもいろいろな品種が増えてきました。それぞれ育て方に工夫がいりますが、それはそれで楽しいですよ」
この日は、春じゃがの収穫の真っ盛り。耕運機が畑の中をゆっくりと進むと、掘り返された土の中から大小のじゃがいもが、ごろごろとおもしろいように出てきます。掘り起こされたじゃがいもは、1個ずつ仕分けして素早くコンテナに。小さなものや青いものは、次に植え付けする時の種芋に回されます。
じゃがいもは土の中で育つ根菜。それだけに、土づくりが出来の良し悪しを大きく左右します。「島原半島は元々、じゃがいもの栽培に適した土壌ですが、それでも土の状態を常に良くしておかないといけません。1回の収穫を終えたからといって、“じゃあ、ちょっと休もうか”なんてことはできない。次の植え付けに備えて、またすぐに土づくりにかかります」
たくさんの微生物を含んだ質の良いたい肥を作り、しっかりと土に混ぜ込む。荒木さん曰く、畑を“ふかふかで気持ちのいいベッドのような状態”にして、次の植えつけに備えるのだそうです。「まんべんなく、バランス良く、これが大事でね。そうやって地力を高めておけば、ある程度は土の力で元気に育ってくれるんです」
土づくりの後は、植え付け。前回の収穫時に分けておいた小さなじゃがいもを、一定の間隔を空けながら1個1個手で植えていきます。
その後は、病気の予防に細心の注意を払いながら土の中を良い状態にキープ。ここは生産者の腕の見せ所。冬に植える春じゃがは、土にビニールをかぶせるマルチ栽培で土の温度を15〜20℃に保つように。気温が暖かい時期に植える秋じゃがは、秋の長雨による湿気を防ぐように。土の状態に気を配りながら、生育を見守ります。「それでも天気はコントロールのしようがないですからねぇ。特に湿度や温度は出来栄えを大きく左右する要素で、たとえば果肉が育つ時期が低温で雨が多かったりすると、表面に茶色い斑点が出る『そうか病』という病気にやられてしまうこともしばしばです」
掘り起こしたじゃがいもの中には、おへそのような出っ張りがあるかわいいじゃがいももちらほらと見られます。「こういう出べそが、たまにできるんですよ(笑)。二次生長っていうんですけど、地温が高すぎたり、雨が多かったりするのが原因。自然のものですから、どうしても機械で作るようにどれもが美しくはならないんです。土の中で育つ野菜なので、掘ってみるまでわかりません」
一筋縄ではいかない、じゃがいもの栽培。「それが不安である反面、楽しみでもあります。2Lサイズのじゃがいもが多い時は、心の中で『やったー!』とガッツポーズです。長年じゃがいもを育てていますが、思い通りの収穫がかなった時は、何度経験しても最高にうれしいですね」
荒木さんは、生協用の玉ねぎも生産しています。「いつも実感しているんですけど、私たちにとって一番やりがいを感じるのは、買い手が決まっているということなんです。私たちが育てたじゃがいもや玉ねぎを食べてくれるのは、不特定多数の方ではなく、生協の組合員さん。だからこそ、不作の年があっても、天候不順が続いても、悩んではいられません。待ってくださっている組合員さんのためにも、いつも『がんばらないといけない』と自分に言い聞かせています」という荒木さん。
普賢岳の栄養たっぷりの土がもたらすそのおいしさを、ぜひ味わってみてください。
※このページの情報は2013年取材当時のものです。
作成時から情報が変わっている場合があります。
産直ってなんですか?
日々届けられる野菜やお肉やお魚。今日も産地から新鮮な美味しさが届きます。でも、福岡の組合員さんと鹿児島の組合員さんは、同じ野菜でも産地は同じではありません。各地生産者と各地の組合員さんを結び、最も美味しい関係を考える。それが生協の産直です。
その土地とそこで育つ食べ物は、とても強い絆で結ばれています。その土地の気候風土は作物や家畜の特性をかたちづくり、多様な食材に対するさまざまな戴き方は土着文化の柱を築きます。生協の産直は、こうした視点を根底に持ちながら、背景とともに各地の生産者と組合員の暮らしを繋ぎます。