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【第九回】賀川豊彦を増やせ!COOPの「はじまりのとき」を深くアツく語ったぜ。

こんにちは。COOP男子の小倉ヒラクです。
いつの間にやら師走となりました。みなさま慌ただしくお過ごしのことでしょう。

さて、そんな折に更新されるCOOP男子企画第九回は『greenzのナオさんとCOOPのルーツを見てきたよ!』です。
えー、毎回WEBらしくコンパクトな記事をお届けしようと頑張っているのですが、残念ながら過去最長の記事となっちまったぜ。特に後半のナオさんとの対話は、ほとんど編集・抜粋ナシでお届けします。大変濃厚ですが、組合員のみなさま必見の内容となりましたので時間を取ってお読みください。

それではいってみよう!

コープこうべ 協同学苑に行ってきました

今回のツアーメンバー。
右から、コープこうべの江見さん、greenzのナオさん、NPOミラツクの加藤さん(←コープこうべと一緒にコミュニティづくりのプロジェクトをやっている)。そして僕。
兵庫県三木市にある研修施設、『コープこうべ協同学苑』。このなかに、日本のCOOP発祥の地の1つである神戸のCOOPの歴史の史料館があります。
大正時代の貴重な写真。COOPの前身、神戸購買組合は米騒動等がきっかけとなって生まれました。
手前に見える台車&自転車に生活品を積んで宅配に走る若者たちを、街の人たちは「購買さん」と読んでいたそうです。
当時の雰囲気を伝えるジオラマ。犬は何をやっているのでしょうか。
「みんな、COOPが来たでー!」
それが現代ではこうなる。
大正当時、若い女性向けの学校もCOOPが運営していたそうです。
醤油や米からはじまり、生活品全体に展開していったCOOP商品。
COOPといえば牛乳。神戸では戦前から質の良い牛乳の供給活動をしていました。
トイレットペーパー、卵、洗剤など。COOPを代表するラインナップ。

【第四回】僕たちは『ポストCOOP時代』に生きている!〜実際に商品を見てみよう〜

COOPプライベートブランドの石油ストーブ。
今やあまり知られていませんが、COOPは燃料供給のインフラづくりにも一枚噛んでいました。協同で購買することで、買いやすい価格で燃料を組合員に提供していたようです(おそらく現代のように燃料価格が標準化されていなかったのでしょう)。
食品偽装の不安から、自前の検査センターを設立。どこまでも自前主義を貫くCOOP。
戦時中。男性がいなくなると、女性や老人たちでCOOPの運営を維持していたようです。

ヒラクの感想:

今まで僕が色んな人に聞いてきたことが、リアルに想像できました。
で、改めて思ったのがCOOPの原点って「ムーブメント」なんだなと。お金持ちじゃないフツーの庶民の、女性や子供たちが自分ごととして立ち上がっていく。目の前にある課題の一つ一つに対して、みんなで知恵を出し合って解決策を考えていくわけです。

でね。そこで思うんだけど、ただみんなが集まるだけではムーブメントにはならないじゃん。
だから、みんなが集まった時に「みんなで共有できる考えかたの軸」が必要になる。大正時代にCOOPがはじまった時、そこには今までと違う社会を提唱するヴィションがあったはずなのです。

本木さん

「ヒラク君その通り!そこには賀川豊彦という人がいたんやね」

ヒラク

「あっ、コープこうべ執行役員の本木さん!いったい誰なんですか?」

賀川豊彦(かがわ とよひこ):大正・昭和期の社会運動家。神戸の貧民街で慈善活動を行ったのち、日本における生活協同組合運動において大きな役割を担った。近代の日本人のなかで、ヒラクが最近もっとも衝撃を受けた人物。偉大。

コープこうべをはじめ、日本各地のCOOPに影響を与えた賀川豊彦。
この人が唱えた「協同組合」の精神こそが、まさにCOOPの未来の鍵になるのでは…?

COOPのはじまりと賀川豊彦についてウェブマガジンgreenz.jp編集長のナオさんと話し込んでみました。
以下そのダイアローグを限りなく無編集でお届けします。ナオさん、お願いしまーす。

鈴木 菜央(すずき なお)さん: ”ほしい未来”をつくるためのヒントを発信するウェブマガジン『greenz.jp』の共同編集長。世界中の”共感”を呼ぶグッドアイデアを紹介・発信しています。サイト:http://greenz.jp/

COOPの「はじまりの時」と、協同組合という精神

ヒラク

「ナオさん、今回COOPのルーツを見てどうでした?」

鈴木さん

「今回ここに来てみて印象深かったのは、COOPの起源。僕はずっと『ものごとのはじまり』に興味があって。
ある価値観や世界観が最初にバンッ!て表現されるのって、熱意と創造性が凝縮されたはじまりのときなんだよね。純粋に「課題を解決する」ことに全力で挑戦できるのって一番最初の時期しかないんじゃないかなあ…とすら思ったりする。
さてじゃあその最初期を経て、実際に組織ができる。つまり自分たちの熱意が現実になるというタイミングがくる。そうすると何が起きるのか。自分自信がつくりだした現実に規定されて、変わるための力が失われていく。」

ヒラク

「ああ、わかるなあ。何かがゼロから始まるときって、自分のモチベーションしか現実を立ち上げるものがない。自分が100%のやる気と情熱を注ぐことでしか、現実をつくりだすことができない。だけど、一度組織が出来てルーティンが確立していくと、100%の情熱を注がなくても事業やプロジェクトは回っていく。」

鈴木さん

「自分がつくりだした現実が、組織や事業モデルをつくりだす。時代それぞれにニーズがあって、それにあわせて商品やサービスを提供することで、そのニーズを満たしていったんだなあ、というのをCOOPを見て思うこと。

企業や政府の思惑に、市民の生活がないがしろにされる。そういう問題を生み出す構造そのものに協同で組み合う=みんなで力をあわせるという答えを出すことで、社会の仕組みを変えてしまったところまでやってしまった。それが日本のCOOPのスゴい業績だよね。でも、その業績が大きくなりすぎて、今はいわゆる大企業病にかかってしまった。」

ヒラク

「そして今度は市民=従来で言う消費者の側にも問題があって。今までの消費者運動も形骸化しているんじゃないかと思うんだよね。消費者の権利を守る、自分たちに有利なように、なるべく安くなるべく合理的にっていうロビイングは、じゅうぶんに小売の仕組みが整って、かつ海外からの安い商品がいっぱい出回っているこの状況で有効なのかなって疑問に感じる。安くて便利っていうこと=助けあって世の中を良くするっていうことがイコールじゃなくて、むしろ自分たちの暮しの足元を切り崩すようなことになってしまっている。」

鈴木さん

「消費者が権利を主張する、そして企業側に何かを要求する。その構造って、実は現状の構造や問題を追認していることになっちゃうんだよねえ。
賀川豊彦が亡くなった時に、仲間のひとり(田中俊介)が寄せたが言葉があって。

“営利経済の矛盾を暴力によらないで、民衆のおたがいのたすけあいによって解決しよう。一人一人は無力にみえる民衆も愛の心に根ざして団結しなさい。たすけあいなさい。組織をつくりなさい。協同組合をつくってみんながしっかりむすびついたら、二度と米騒動をして警察にひっぱられないですみますよ”

これまさに非暴力・非服従のコミュニケーションだよね。労働者=市民をかわいそうな対象ではなく、主体者として見る。それぞれがもっているものをそれぞれに持ち寄って、心をあわせて社会を変えていこう。このポリシーは今の社会でも通用する、立派なものだよね。そのとおりだなと。

当時でも今でも社会の構造は大きくは変わらない。人間性よりも、儲けをつくりだす行為を優先する社会の圧力の前に個人個人の尊厳や暮しや安心は簡単に吹き飛んでしまう世の中の構造。これは大正でも今でもいっしょ。だから、COOPの生協運動の最初の理念が必要なんだ。」

ヒラク

「民衆が協同で組み合って社会をよくしよう、という精神そのもの…」

鈴木さん

「そう。賀川豊彦さんの精神に大きなヒントがあると思う。『助けあおう、助け合うことで色んなことが解決する。そうすればつい暴力に頼って変えようとする構造を変えられる。人間らしい、暴力に支配されない社会をつくることができるよ』って。」

ヒラク

「確かに、いまの時代のタイミングで、その考えはあらためてリアリティがあるね。」

鈴木さん

「あのさ、だから…
賀川豊彦を増やすってことなんじゃないかな。」

ヒラク

「おお、なんと!!!!」

鈴木さん

「問題だらけの世の中で、僕たちがどうやって助けあって生きていくのか。全てを打ち捨てて、田舎にいってユートピアを建設しようってことではなくて、ふだんの暮しを、お互いに助け合うということで、よりよく改善していく。その土台を、協同組合というかたちで実践しよう。そこまでは賀川豊彦がつくった。その土台を、賀川豊彦の仲間が引き取って、時代それぞれのニーズにあわせて事業やサービスをつくっていった。それがこの神戸のCOOPの歴史。」

ヒラク

「そして今あらためて問われているのはその土台の部分。賀川豊彦の唱えた精神というレイヤーがあって。そのうえに具体的な事業が乗っかっている。事業そのもののベースにある精神をもう一度見直すところまで戻って行かないと本質的な変化は訪れない。」

複雑化する問題を、助けあって解決する

ヒラク

「僕がデザイナーとしての仕事を通して感じている課題として生態系的な限界がある。賀川豊彦さんが生きていた時にはなかった問題だけど、僕たちはその問いに答えられないと100年後生きていないかもしれない。そういう100年前になかった問題に、どうやって基本的な精神をつくるべきなのか?」

鈴木さん

「COOPってさ、協同『組合』という組織論にフォーカスされがちだけど、組合というのは、組織でもあると同時に考え方や哲学でもある。その哲学を使って賀川豊彦さんたちは病院をつくり、学校をつくり、商店をつくり…とありとあらゆるものにCOOPのDNAを活かしてつくってきた。そういうCOOPのDNAを、今の社会でどのように活かしうるか。その機会や場を提供することがCOOPの役割だと思うんだ。」

ヒラク

「それはまさに、同じくgreenzのYOSHさんが言っていた社会をCOOP化するということだよね。
つまり、COOPをソフトウェアではなくオペレーティング・システムだと捉える。」
【第八回】greenz編集長に聞くCOOPの未来 COOPはソーシャルデザインだ!

鈴木さん

「そしてそのオペレーティング・システムは囲い込みではなくオープンソースが望ましいよね。社会が機能不全を起こしている場所に、COOPのOSである『みんなで助け合う』ことを導入して、立場を超えて解決策をつくりだしていく。

今は社会の問題が複雑化していて、1つの問題を解決しても全体の問題は解決しない。だから、よりシステム論的な視点が必要になってきている。複雑なシステムを俯瞰するための様々な取り組みを応援することがCOOPの新たな責任なんじゃないかなあ。例えばその典型が、新たな命題である『生態系の限界=サステナビリティ』になるはずだよね。」

ヒラク

「greenzがやっているのは、集合知やネットワークによって未来の社会への課題解決の視点を見出す、ということ。誰か個人による俯瞰の視点ではなくて、みんなの知識を持ち寄って助けあうことで正解を見つけようってことだと僕は思うなあ。」

鈴木さん

「今ここに賀川豊彦がいたら、どう思うのか、何をするのか。そういう問いを持つひとが増えていけば、もっともっと新しいことが生まれていくんだよね。COOPって、単に便利な小売の仕組みをつくっただけじゃないんだ。だって、国境を超えた組合活動の連携が、国連の創設につながっていったんだよ。思想が人類の発展に大きく影響していくことがたくさんある。

例えば神戸の組合員は約160万人いる。大企業の論理で言うと、その160万人は単に商品を買うひとで、その数字は売上に変換される。それってCOOPの意味はないよね。その160万人は本当は『助けあって社会を良くしていこう』という人たちの集まりなんだよね。

現代と100年前を比べると人のつながりの質は大きく変化している。個人の分断が進んで、日本では単身世帯がマジョリティになっている。そのなかで育児や介護の問題で個人が深く悩み、孤独になっている。助けあってつながりあう、そういう『COOPのはじまりのとき』のありかたは、今らしいかたちで役に立つはず。 だから『はじまり』をもう一度起こす未来の小さな賀川豊彦を増やす。これがCOOPのミッションなんだと思うよ。」

See You Next…!

PROFILE
小倉 ヒラク
Hiraku Ogura

発酵デザイナー/アートディレクター

0歳からのCOOPユーザー。日本各地の郷土文化や発酵文化に関わるデザインを手がける一方、絵本を出版したり、微生物を育てるワークショップを行っています。この企画では「COOPを発酵させること」を目指し、リサーチや企画の過程をまるごと公開していきます。お楽しみに!

http://hirakuogura.com

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