こんにちは、COOP男子の小倉ヒラクです。
COOPって、これからどんな風になっていけば素敵なのでしょうか?この連載を読んでいるCOOP職員の皆さまも未来のあるべき姿を自問自答していることかと思います。
で。この「未来のあるべき姿」を想像するのって難しいですよね。自分の持ち場での仕事をこなしながら、組織全体のあり方を「俯瞰の目」で見るのはタイヘン。しかも、その組織は自分の生まれるはるか昔からある仕組みで動いているわけで。
こういう時は、「COOPに関わっている自分」という視点をいったんゼロにして物事を見てみると良さそうです。
ヒラクもここ数ヶ月、COOPにどっぷりと浸かって「中のひと」になってきたので、今回は僕の信頼&共感してやまないWEBメディア『greenz.jp』の鈴木菜央さん(通称ナオさん)と兼松佳宏(通称YOSHさん)に「COOPってどんな風になったら面白いと思う?」と聞いてみることにしました。
話題が多岐に渡ったので、複数回に分けることにしました。前編は、ナオさんとのお話を中心にお送ります。
それでは、ナオさん、YOSHさん、どうぞよろしくお願いしまーす!
「実は僕の親父、COOP発祥の地、イギリスのロッジデールの近くで生まれたんだよね。だから親父からCOOPの話をたくさん聞かされて育ちました。」
「おお、いきなりのサプライズ!」
「親父がCOOPについて言ったのはね『人の生活が資本家のつくった仕組みにコントロールされている中で、民衆がどうやって自分の暮らしを守っていくかという運動なんだ』って。つまりみんなが『助けあって暮らしを良くしていこうよ』と『組み合う』ということなんだよね。」
「ナオさんの言うとおり。そういうルーツを持ってCOOPが始まっていったんだよね。ところがCOOPのモデルが標準化した結果、他の小売や宅配の事業モデルとの競合になっていく。そのなかで、じゃあこの先どうしよっか…という状況にある。」
「なるほど、それが日本の状況なわけね。じゃあ例えばイギリスをはじめとして、他の国ってどうなってるの?」
「それはこのCO-OP WEB LABOのWorld Coop Nowという連載で読めます。例えばヨーロッパを見てみると、環境に負荷をかけないオーガニックな商品の開発、あとは安く大量生産からしっかりした品質なものを扱う方向に向かっているかな。日本のCOOPはというと、そういう方向性に向かう流れもあるけど、全体的に見ると『安くて便利』という方針だよね。」
「ああ、そうなんだ。例えばスウェーデンやスイスなんかでは、街を歩いているとごく普通にオーガニックのスーパーがある。日本でも、小さな子どもがいる若いお母さんにはニーズはあるよね。で、そういうのが欲しい結婚してない人もいっぱいいる。そういう人は家族がいる人よりもきっかけがないから、普通のスーパーで買い物したりしちゃう。もったいないよね。」
「僕、京都に住んでいるんだけどオーガニック食材でいうと、上賀茂の方の農家さんからすごく安い値段で野菜が買えたりする。東京に住んでた時に高級スーパーの有機野菜コーナーで買ったレタスの価格が、地方に行くと半額になる。都市と田舎の流通の溝を埋められるような役割を、COOPが果たしてくれるといいと思うんだよね。」
「そうだなあ…。例えば都心の高級スーパーに行くと、オーガニックのトマトが5玉598円ぐらい。普通のスーパーの安売りのトマトがその半額くらい。後者に近い値段で、生産背景がしっかりわかって、かつ環境にも健康にも負荷をかけないトマトが買えたらいいよなあと思うんだよね。そういう流通を本格的に作り出せるのがCOOPなんじゃないかと思ったりするわけ。」
「それは面白いね。COOPがそんな風になったらいいなあ」
僕もかつてヨーロッパに住んでいた時期がありました(←フランス)。その時に驚きだったのが、オーガニック食材が当たり前のように流通していること。オーガニック食材専門のスーパーもごく普通に浸透していて、そして値段も安かった。これは国の政策として有機農業を保護しているからできることで日本で同じようにできるかというとそうではない。だけど、国の政策がダメならCOOPがやるしかないと思うわけです。
組合員ならみんな享受できる、環境にも健康にも負荷をかけない食材や日用品が揃う流通。オーガニック文化の民主化。あったらいいよね、そういうの。
「そうねえ。できたらいいと思うけど、今のままじゃきっと難しい。僕がCOOPの問題だと思っているのは3つ。まず規模が大きすぎる、2つめに関係性が非対称なんだよね」
(非対称…? どういうことだろ?)
「つまりさ、僕が何をやってもCOOPは変わらない、って思ってしまう。自分の声が届くような気がしないんだよね。組織が大きくなりすぎた問題とも関係しているかもしれないけどね」
「そうかー、元々は私がつくるCOOPだったはずなんだけどね…」
「3つ目の問題。COOPはもう地域に根付いていないんだよね。例えば僕の実家で使っているCOOPにはローカリティを感じない。ローカリティを感じさせる仕組みでいうとね、アメリカの西海岸には、各地にローカルな COOPのスーパーがある。たとえば僕が昨年訪ねたワシントン州のSkagit Valley(スカジットバレー) Food Co-op。40年以上の歴史があるマーケットで、有機栽培、フェアトレード、量り売り方式は当然として、この店独自の取り組みとして、ローカル、GMOフリー、グルテンフリーの3つがラベルになっていて、商品の特性がわかるようになっている。でね、COOPと同じで買う人も従業員も月会費2ドルから会員になれるし、月100ドル払えば、経営に参加することができるわけ。全体として、理にかなっているよね。オレ、スカギットバレーに住んでる。地元の野菜買う。友人たちの雇用になる。だから楽しい。意味がある。今のCOOPにはない『その店を選ぶ意味』があるわけ。」
参考サイト:Skagit Valley Food Co-op
第五回のテーマでもあった「本気でローカルに向き合う」という課題。
人口が減っていく、高齢化していく、地域経済全体がシュリンクしていくというシビアな現実に対して僕たちは「地域のコミュニティ全体を見渡してマーケットをつくる」ということにチャレンジしなければいけない。
そのきっかけになるようなお店あるいはサービスを通して「リアルローカルな流通」をつくる必要がある。そして、それはCOOPの原点に戻るようなトライアルになるのではなかろうか…?
と、そんな可能性をモヤモヤとイメージしたところで、後半に続く。
See You Next…!
次回予告:「小倉ヒラクのCOOPとなにしよっか?」はだいたい隔週で更新。
次回はYOSHさんの話を中心に「ソーシャルデザインとしてのCOOPの可能性」に迫ります。どうぞお楽しみに!
発酵デザイナー/アートディレクター
0歳からのCOOPユーザー。日本各地の郷土文化や発酵文化に関わるデザインを手がける一方、絵本を出版したり、微生物を育てるワークショップを行っています。この企画では「COOPを発酵させること」を目指し、リサーチや企画の過程をまるごと公開していきます。お楽しみに!
前は個別宅配を頼んでいましたが
生協は、あたかも子育て世代しか見ていないような品揃えで、大人のみの世帯にはちょっと合わないので、十年くらいやって止めました。
これからは超高齢化社会になるし、子どもがいない熟年世帯にも着目した事業をして貰えたらなと思います。そうしたら、今よりも組合員が増えるのではないでしょうか。