こんにちは、小倉ヒラクです。
えー、COOP男子、2016年一発目の更新はなんとイタリアはボローニャからお届けします。
…アポ無しで。
日本から突然訪ねてきたアヤしい男子に優しく対応してくれたAnna Vergaさんのインタビューを軸に、イタリアのCOOPのレポートをお送りいたします。
それでは行ってみよう!
※ちなみに今回は国境をまたいだ記事なので、頑張って資料をあたっていますが100%裏を取りきれない内容もおそらくあると思われます。あくまで「小倉ヒラクという個人」が見聞きした、という前提でお読み下さいませ。なお、インタビューはイタリア語ではなく英語でおこなわれました。
「僕、日本でCOOPの未来のブランドをリサーチするプロジェクトをやっています。で、海外ではいったいどんな風な展開をしているのかを知りたくてイタリアに来たんです。 なぜイタリアのCOOPの本部はボローニャにあるのでしょう?ここがルーツなのですか?」
「もとはミランにありましたが、このボローニャという街があるエミリア・ロマーニャが生協システムがよく根付いている地域なのですね。だから今はここに本拠地を移してきました。加えて、ここは流通(配送)の拠点としても有利なのです。」
イタリアのCOOPの概要(←COOP関係者だけ読んでね)
イタリアのCOOPは、全土を9つの地域に分けて事業連合をつくり、それぞれの地域ごとにサービスの展開をしています。日本のCOOPと違い、宅配ではなく店舗での小売がメイン。食品を中心に生活雑貨も扱っています。ボローニャは、Coop Adriaticaという地域連合の一部であると同時に、全地域の統括をするCoop italiaの本部(日本でいうところの日生協)がある地域です。
「イタリアンコープのターゲットはどのようになっていますか?例えば、年代や職種でいうと…」
「うーん、いい質問ですね。まず、コープイタリアの組合員は900万人います。なのでいくつかのセグメンテーション(区分け)があります。一番多い組合員は40〜60代なのですが、若年層向けの対策もしています。例としては、COOP & GOです。」
「あっ、それ店舗で見ました!」
「これは若年層向け。仕事で忙しくてもすぐ食べられるようにお洒落なお惣菜ラインです。あとは、オーガニックプロダクトも展開しています。」
「それも見ました!vivi Verde ですね?」
「そうです。それにCrescendoというベイビーラインもあります。」
「このあたりのラインは若い人を中心に、新しい価値観を持つ人たちを明確に意識しています。」
「あとは、Fior Fioreというブランドも見ました。これは?」
「これはプレミアムラインですね。郷土料理の食材をベースにしつつ、品質を通常のものより高く担保したものを扱っています。
COOP イタリアは900万人の組合員がいるわけなので、基本は全ての人が満足することを考えます。ただ、同時にきちんとその層を区分けして、ブランドを整理していくわけなんですね。誰でも使える全ての人向けのベースのブランドがあったうえで、特定の傾向のニーズを仮説をたて、新しいブランドを試していくわけです。」
「そのようなブランド戦略は誰がつくっているのですか?」
「それがここCOOPイタリアの私の部署です。調査・仮説立て・戦略立てを一括してやる部門があるのです。」
「なるほど!日本ではそこまで一貫したブランド運用はなされていないなあ…。Annaさんがさっき言った『全ての人のためのプロダクト』はあっても、Fior Fioreのような『区分けされたブランド』がうまく機能していない。」
「つまりセグメンテーションができていない。なるほど…。まあそれだけ過去のやり方がまだ機能しているということなのだけど…
そうですね。日本のCOOPは、もっと色んな人と対話をしたほうがいいかもしれませんね。メインの顧客層とだけではなく、少数の集団にいる人たちと。彼らから、新しい、あるいは温故知新的なニーズを汲み取る。そしてそこから仮説をつくり、試す。その繰り返しによって、ブランドは生まれ変わっていくのです。絶え間なく変化し続け、アップデートしていく。変化を恐れない。少数者の声を汲み取る。これが私たちの大事にしていることであり、COOPのブランド戦略の核なのです。
なぜなら、組合員が常に変化し続けているからなのです。」
「これはCOOPとEATALYとのジョイントベンチャーです。Coop Italiaではいくつか実験的なプロジェクトをしていて、その一つですね。」
「ということは、EATALYとCOOPが同じ建物のなかにあって、それぞれの共通点と業種の違いを組み合わせて事業をしているということなんですね?2つの組織のなかの共通点は何なのでしょうか。」
※EATALY:イタリアの食文化を発信するフードマーケット。日本でも展開しています。
「Librerie COOPが入っている建物はもともと映画館で、良い雰囲気でしょう。この建物のなかで、図書館と飲食店、2つの機能を合体させることで新しいフォーマットをつくりたかったのですね。そこで新しいショッピング体験をしてもらうことで、新しい組合員開拓のチャンネルをつくりたかったのです。」
「なるほど。パートナーの顧客基盤と相乗効果で新しい化学反応を狙っているという…」
「その通りです。Librerie Coopのすぐ近くにも実験的な店舗があるんですよ。マルシェのフードコートのなかに、プレミアムブランドのFior Fioreのカフェがあります。ここでエミール・ロマーニャ州の伝統的な郷土料理とワインを楽しめるようになっているのですね。」
「Fior Fioreという新しいプロダクトブランドをつくったとしたら、それを体験して楽しんでもらう必要がある。その時に、COOPとは違う顧客層がすでにいるマルシェのなかにショーケースをつくることで、新たなコミュニケーションポイントをつくるわけですね。
Librerie COOPでもそうですけど、異質なものを組み合わせないと新しいフォーマットは生まれまないし、新たな体験も生まれないのです。
私たちが常に探求しているのは、新しい人達に新しい体験をしてもらうことです。実際にその食材を食べてもらう、楽しんでもらう。それではじめてブランド、商品ラインが成立するのです。」
「EATALYにクラフトビールのコーナーがありましたね。置いてあったビールはCOOP商品ではないのだけれど、土地に根付いたビールを楽しんでいると、Coop Italiaのコンセプトが良くわかるような感じがありました。日本のCOOPでは、プライベートブランド以外のプロダクトはほとんど量販店で扱っている一般的な商品ばかりで、地域性を感じません。COOPブランド以外の商品もまたローカルプロダクトであるというところがすごく面白いなあと思うんです。」
「それは、このエミリア・ロマーニャ州が地域とのつながりが強い土地だからなのです。そしてそれは同時に、地域ごとのセグメンテーションもはっきり分かれているということ。その土地ごとに特徴的な郷土料理や食材があり、それはとなりの地域ではつくられません。」
「確かに。ハムでもチーズでも街ごとに製法に個性がありますね。では、Coop Italiaも基本的にはそういう土地の特性にあわせて商品を展開しているのですね?」
「そうですね…。そうとも言えるけれど、単にそれぞれの地域のCOOPがバラバラにやっているわけではありません。地域性に基づいた商品を扱うという統一された原則のもとに運営されているのです。つまり、商品はローカルだけど原則は統一なのです。そのうえで、イタリアの地域性が強いという特性のもとに商品ラインナップができているのですね。それはPBでもそうでないものでも変わりません。」
「ところであなたはなんでCOOPの仕事をしているの?」
「実は僕、日本の発酵文化の専門家でもありまして。発酵デザイナーと呼ばれています。で、ずっと地域の発酵文化に関する仕事をしてきました。
そこで感じたのが、日本においては郷土文化というものがかなりのスピードで衰退しつつあるということです。農業をはじめとする地域産業においては、残念ながら行政の仕組みもあまり良いとは言えない。そのときに、COOPは各地域に大きなインフラを持っているわけです。じゃあCOOPが変われば、日本の基盤となっている地域の文化や経済も変わるのではないか…と思ってやっているんですね。」
☆ちなみに「発酵デザイナー」と聞いてアンナさんのテンションが超上がり、会話が活発になりました☆
「えっ、そうなの!?それは色々と興味深いですね。あなたのような若い人は日本にたくさんいるのですか?」
「そうですねえ、多いとは言えないけど…。マイノリティですが、僕のような傾向を持った人の層は確実に形成されていると思います。」
「そんなヒラク君から見てイタリアのCOOPはどう見える?」
「ぶっちゃけかなりカッコいいです。デザイナー的な視点で見てみると『自分が何を選ぶべきか』が明確に伝わります。例えばFior Fioreのパッケージのこの紫色を見ると、直感的に『あ、これはプレミアムラインなんだ』と伝わるわけです。」
「じゃあ例えば、Fior Fioreの商品が日本のCOOPに置いてあったらどう?」
「はい。買いますね。日本でも確実に伝わると思います。ただ問題は、日本のCOOPの店舗にはあまり僕のような若い人が行かないというのがそもそもの問題かと。」
「あらあら、それじゃあせっかく置いても意味ないですね。笑。そういう『若者離れ』をどう払拭するのか、日本のCOOPには何か考えがあるのかしら?」
「それを考えるのが僕の仕事であるわけでして…。じゃあ、そうだなあ。Annaさんたちと日本のCOOPがコラボレーションできるようにこのブログで呼びかけるってのはどうでしょうか?」
「それは面白い!じゃあ約束ね。」
「はーい。それではまた会いましょう!ありがとうございました。」
ボローニャの街を散歩して、ご飯を食べるとAnnaさんの言う「地域との強いつながり」を感じます。同じエミリア・ロマーニャ州であっても、隣り合った街同士でハムやワインの製法が違ったりする。このお国柄にCOOPの協同組合の仕組みがマッチしているのだと納得しました。
地域ごとに連合体をつくっていたり、他のどのスーパーチェーンより普及していたりするところが日本によく似ているので、日本のCOOPにとっても参考にできるところはたくさんありそう。
ただ、そのためには「マイノリティの人たちともしっかり対話をする」「変化し続ける勇気」が必要になるのでしょう。
最終的にはAnnaさんに檄を飛ばされた感じになってしまったぜ。この続きを今度は日本でやりたいなあと思ったのでした。
それではSee You Next…!
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【次回予告】仲良しのパン屋さん、タルマーリーの格さんから聞いて興味を持っていたイアリアのクラフトビール、美味しかったー!
そして次回のテーマもビールです。お楽しみに!
発酵デザイナー/アートディレクター
0歳からのCOOPユーザー。日本各地の郷土文化や発酵文化に関わるデザインを手がける一方、絵本を出版したり、微生物を育てるワークショップを行っています。この企画では「COOPを発酵させること」を目指し、リサーチや企画の過程をまるごと公開していきます。お楽しみに!
仮説を作り試す!
少数の人の声に耳を傾ける。
少数の人の声ってもしかしたら多数の人が諦めていることや、解決の方法がわからなかったりして、声として出てきてないこともあるんだろうなーって、この記事を読んで思いました。
メッセージありがとうございます。ヒラクです。
そうなんですよね。少数の人の声をひろうには、そのための考え方と仕組みが必要だなと思います。
イタリアではその方法のヒントを教えてもらいました。
はじめまして。
以前に二回ほどアンナさんと商談してチョコを輸入したことがあります。自分以外にも本部訪問された人がいるのを拝見してとても嬉しくおもいました。アンナさんも相変わらず元気なようですね。
今月末にまた会いにいって輸入食品の打合せをしてきます。フィオールフィオーレは高いんですよ。でも日本に輸入できないかきいてきますね。
えっ!そうなんですね!(驚)
アンナさん面白い人ですよねえ〜。フィオール・フィオーレ、日本で見かけたら買うな…。
期待しています。
なかなか興味深い記事でした、確かに若い人たちが少ないことが良いのか悪いのか今は判別できませんけど?