こんにちは、小倉ヒラクです。COOP男子企画、おかげ様で公開からたくさんの反響をもらいました。う…嬉しいぜ!
第二回のテーマは「そもそもCOOPって何ですか?」と題して、日本津々浦々の皆様が感じているであろう、素朴なギモンに答えていきます。どうぞよろしく!
というわけで向かったのは、兵庫県神戸市東灘区にある「生活協同組合コープこうべ」の本部。実はここ、日本でもっとも古いといわれている「COOPの原点」のような場所。
(余談ですが東灘地区は日本酒の聖地。発酵研究家であるヒラクは前日現地入りし、日本酒のリサーチも行っておりました)
この「コープこうべ」、単一の協同組合で168万人の組合員数を誇ります。
「ん…?『単一の』『協同組合』で、『組合員』って…?」
そうですよね。のっけからそういう「ハテナ?」が出ますよね。安心してください。この企画は、こういうギモンにお答えするためにあるのです。
さて。
そして今回お話を伺ったのは、コープこうべの本木 時久さん。
それではさっそく本木さんに質問してみましょう!
「単刀直入ですが、コープって何の組織ですか?」
「一言でいうと、『相互扶助』の組織。生活者がお互いを助け合う組織のこと。」
「ということは、いわゆる株式会社みたいな組織じゃないんですね?」
「そういうことです。利益を出すことではなくて、社会貢献がミッションです。」
世の中には、「利益の追求を目的としない組織」というものがあります。そのなかの一つがコープ。ある特定の人たちに対して貢献をすること自体がミッションになっていて、コープ以外では例えば、信用金庫や農協なんかがあります。
「コープの貢献の対象としている人物像と分野は何ですか?」
「生活者の、暮らしを豊かにするための貢献です。だからコープは『生活協同組合(略して生協)』と言うんです。生活者が安心して使えるような生活品やサービスを共同で購入したり使ったりするための組織です。」
「おおーなるほど!生活者が協同でやっている組合ということですね。ちなみにコープと生協ってどちらも同じ意味ですか?」
「そうです。コープの正式名称は、「協同組合」を表す英語『CO‐OPERATIVE』と言って、『CO(共に)』『OPERATIVE(オペレィティブ:働く、活動する)』を合わせたもの。つまり、『CO・OP』を日本語読みしたものです。」
(本木さん、僕の素人すぎる質問に丁寧に答えてくれてありがとう…!)
(そういえば、久しぶりにこんな素人に会った気がするな…!)
※ちなみにこの連載では、英語表記は読みやすいCOOPを使うことにしました。
さて。次に気になるのが「COOPの全体像」。
今僕が使っているのは「パルシステム」だし、ここは「コープこうべ」だし、このサイトの母体は「コープ九州事業連合」だし、たぶん全部COOPなんだけど、全体を統括するような仕組みってあるのかしら?
「基本的にはコープこうべも、コープ九州事業連合も、それぞれ自分たちのルールで運営しています。」
「えっ、そうなんだ!COOPって、まとまったひとつの組織じゃないんだ」
「そうですね。全国の生協の活動をサポートする組織※はあるのですが、基本的にはCOOPとしての理念と仕組みを共有したうえで、それぞれ独自に運営しています。」
ななな…なんと!
いわゆる「経営本部室」みたいなのを持たないのに、こんなに普及しているなんて!
…いや待てよ、もしかしたら「中心を持たない」からこそ、日本全国に波及していったのかもしれない。これは一旦「組織=企業」という先入観を捨てたほうが良いのかもしれない。
冒頭で言った『単一の』という意味は、『コープこうべ単一の』ということです。各エリアそれぞれのCOOPが組合員のネットワークを持って日々商品やサービスをやりとりしているわけです。さて、それでは『組合員』とはなにかを説明していきましょう。
さて、今までの流れをたどってみるとだな。
まず、COOPは「生活者がお互いに出資して運営している組織」で、いわゆる「株式会社」ではない。
そして、各地域で色んなCOOPが、それぞれ独立して運営されていて、全体が統括されているわけではない。
と、こんな感じになります。
だとすると、サービスを提供する側、受け取る側の関係性もまた、今のビジネスの仕組みと違ったものになるのではないか?
教えて、本木さーん!
「COOPにはいわゆる『お客様』はいません。商品やサービスを売る側も、それを買う側もともに『組合員』といいます。同じ組合を運営する仲間ということですね。」
「じゃあ、僕も組合員ということですね。組合員はお客様とどう違うんでしょう?」
「実はね、ヒラク君がCOOPのお店で商品の棚卸しとかを手伝ってもいいんですよ。同じ組合を運営する立場だからね。お店で働くひとも、商品を手に取る人も、対等にCOOPを運営する『主体』なわけです。」
実はこれが最も「組合」の「組合たる所以(ゆえん)」かもしれません。COOPに加入するときに、一口1,000円くらいの「出資金」を出しますが、これは「原資を一部負担して、組合の1メンバーになりますよ」という宣言なわけです。そう考えると、COOPというのは運命共同体的な「コミュニティ」なわけよ。
「ちなみに、COOPのスタッフは『生協運動の専従者』というふうに定義します。組合の活動を主たる仕事とする人、ということです。」
「じゃあ、僕みたいな組合員はなんて定義されますか?」
「ヒラク君は『一般組合員』といいます。コープこうべの組合員168万人のうちのほとんどがそう。」
他にもどうやら組合員の定義があるそうなので、本木さんのお話を僕なりに噛み砕いて図にしてみました(あくまで僕の個人的な理解です。細かいところは突っ込まないでおいてね)。
まず、専従者には二種類あって、現場業務にあたるスタッフと、経営にあたる理事会。これはまあいわゆる企業と似てるかな。
そして、サービスを受け取る側の組合員が特徴的。まず、普通に商品やサービスを購入するだけの「一般組合員」。そして、地域内でCOOPの施設等を使って勉強会やワークショップ等をするサークルメンバーとしての「活動参加組合員」がいます。僕も以前、手前みそ講座に出たことがありましたが、これは「活動参加組合員」のお母さんたちによる企画でした。さらに熱心に活動をすると「COOP委員」となり、商品開発のことを考えたり、活動の普及の一端を担うプロボノ(専門的ボランティア)のような存在になります。さらにごく限られた定員数で「総代」という仕組みがあり、これは経営の決定権を左右するような株主のようなポジションもあります。
(ちなみにヒラク祖母は、コープさっぽろの活動参加組合員だったことが判明…!)
(おばあちゃんによろしく…!)
いかがでしょうか。だんだんと「そもそもCOOPって何?」のギモンが解けてきたのではないでしょうか。
僕なりにCOOPとは何かをざっくりと定義してみたらば、「生活者の自治を守るコミュニティ運動」ということになります。それをもっと率直に言いかえると「おとっちゃんお母ちゃんが自分の暮らしを守るために仲間で頑張る場」ということ。
自分たちの暮らしを守るために、安全なモノが手に入るようにする。
自分たちの暮らしを守るために、生活の知恵をみんなで集まって学ぶ。
自分たちの暮らしを守るために、お店や宅配サービスの仕組みをつくる。
そんな素朴かつしごくまっとうなモチベーションが、全国に広がっていったわけですね。
「自分の暮らしは、自分たちでつくっていこうぜ」と。
となるとだ。
実は、COOPの未来を考えるということは、僕たちのコミュニティの未来を考えるということであり、暮らしのあるべき未来を考える。ということになる。
ななな…なんてことだ。
COOP男子企画、実はそんな壮大なテーマが隠されていたとは…!!
「ふふふ。ようやく気づいたようだな。君にはこれから更なる試練が待っているのだ…!」
See You Next …!!
次回予告:「小倉ヒラクのCOOPとなにしよっか?」はだいたい毎月1日・10日・20日あたりに更新予定!次回は本木さんのお話の後編。COOPの商品と流通網、これまでの沿革を掘り下げていきます。お楽しみに!
発酵デザイナー/アートディレクター
0歳からのCOOPユーザー。日本各地の郷土文化や発酵文化に関わるデザインを手がける一方、絵本を出版したり、微生物を育てるワークショップを行っています。この企画では「COOPを発酵させること」を目指し、リサーチや企画の過程をまるごと公開していきます。お楽しみに!
面白かったです。
そう言えば大学時代は大学生協でお世話になったりもしたんだよなぁ、付き合いながいんだなぁ
では、「株式会社」同様に、CO・OP事業所内部での「熾烈な上下間関係(ex.圧力的上意下逹等々)」はあり得ませんね?
コープの組合員として勉強になりましたありがとうございます