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【第十六回】協同組合は生協だけじゃなかった!組合連合は地域のインフラになれるのか?

こんにちは、小倉ヒラクです。
なんとなく秋の訪れを感じる季節になりました。皆さまお元気でしょうか?福岡でのトークイベントも始まり、今年後半からは九州を掘り下げていくことになりそうです。

でね。今回のトピックスは「COOP以外の協同組合」について。
なぜそんな事が気になるかというと、今年の夏のヨーロッパ滞在時での気づきから(詳細は本文を読んでね)。

日本には実はCOOP(生活者協同組合)以外にも協同組合があり、様々な領域のインフラをかたちづくっているのであるよ。

ということで。
今回お話しを聞いたのは、コープかごしま代表理事、松薗孝夫さん。
なんとなくご飯食べながらの気軽な話をしにいったつもりが、「COOPが他の協同組合と連携して地域のインフラとなれるか?」という壮大なインタビューになってしまいました。

それでは行ってみよう!

松薗 孝夫(まつぞの たかお)さん:生活協同組合コープかごしま代表理事。コープかごしまの事業を統括しつつ、鹿児島県における生活者のインフラを守るべく、他の協同組合との連携を進めている「めっちゃ鹿児島のことを考えているコープの人」。農業や漁業、畜産業にも大変造詣が深い紳士でした。

鹿児島におけるCOOPの起こり

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「まずはじめに、鹿児島におけるCOOPの始まりを教えて下さい。」

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「コープかごしまの最初は大学生協※でした。鹿児島大学でやってた共同購買事業(特に牛乳)を、地域の人たちもやりたいということで大学から独立したのが始まり。1970年代はじめぐらいの頃で、市場に出回っている食品に危険なものがいっぱいあったんですね。」 

※研究機関の学生・職員向けのCOOPのこと
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「おお、大学生協から始まったんですね。しかし大学のなかの一部門が独立事業を起こすのは大変だったんじゃないんですか?」

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「大変だったみたいですよ。職員総出で商品を配達したりして。素人なりに試行錯誤するうちに、今度はいつでも商品が手に入るように店舗をつくろうという話になったんですが…」

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「えっ?『店舗をつくろう』と言うのは簡単ですけど、お店をつくる資金はどうしたんですか?」

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「実はね、農協から借りたんですよ。同じ協同組合からだからね。それでね、主商品のお米を取り扱う免許も農協に助けてもらいました。さらにね、お店の運営ノウハウも、COOPと農協でスタッフの交流をして培っていった。そんな風にね、鹿児島では生協(COOP)と農協(JA)の結びつきが強かったのです。」

 

生協=生活者、農協=生産者のCOOP

イギリス、デヴォン州で訪ねた小規模有機農家の協同組合。イギリスではCOOPは特定組織ではなく「仕組み」として広く普及しまくっていました。
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「実は僕、この夏しばらくヨーロッパに滞在して、向こうの農業の現場を見てきました。農家さんから『お前は消費者の協同組合(=COOPのこと)の仕事しているのか。生産者(農家)の協同組合はどうなってるんだ?』と聞かれた時に気づいたんですね。

あっ、生産者の協同組合ってつまり農協(JA)だなと。

COOPは主に都市部を中心に『どうやってモノを買うか』というコンセプトで始まった。いっぽう、農村では『どうやってモノをつくるか』という運動が必要になる…」

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「そしてそれは、農協が担ってきたんですね。作物をつくった後は、出荷しなければいけない。肥料や耕す道具も必要になる。その時に、協同組合の発想が役に立つ。みんなで出資して、販路をつくったり設備投資をしたりすることをまとめてやろうということになるう。これが農協の起こりです。」

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「そういうことなんですよね。それで僕の訪ねたイギリスの西部では、有機農業をやっている小さな農家が集まって有機農業COOPを自分たちで組織しているわけです。主流の大規模農業ではないやりかたを、協同することでリスクを減らそうとしていました。」

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「それはだいぶ日本とは違いますね。日本の農協は、国策から生まれました。戦後の大変な時代に、食糧増産政策の一環としてスタートしたんですね。つまり国の農業政策の担い手=農協です。だから、農協の事業には助成金や補助金がつくものが多いんです。」

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「どひゃー!知らなかった!
消費者の協同組合(COOP)はある種国策のオルタナティブとして生まれたわけなので、立場的には逆と言ってもよさそうですね。」

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「そうなんだよ。日本の農協はスゴいんだ。だって、出荷・流通の機能があって、農機具を農家に売って、農機具を買うお金を貸す金融機関があり、ケガや病気した時の共済保険があり、しかもスーパーマーケットまである。農村の暮らしに必要なものを全部備えているわけ。」

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「えっ、スーパーもあるんですか?」

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↑http://kyushu.acoop.jpからお借りしました↑

「地方に行くと、A-COOPの看板を見るでしょう。これは農協が運営しているスーパーマーケットです。」

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「Agriculture(農業)のCOOP(協同組合)ですもんね。なるほど!
それでイギリスの話に戻るとですね。有機農家COOPの人から『日本の農協は現代の社会課題にちゃんと向き合っているのか』と聞かれたわけです。僕は何も答えられなかったんですけど、実際どうなんでしょう?」

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「うーん…そうだねえ。まずヒラク君に知っておいてほしいことは、地域における農協の価値が揺らいでいるということ。かつて、高度経済成長期において、農協はそれこそ各集落に1つはあるような存在だった。農家のおばちゃんが事務所やお店に歩いていけるような。

ところが、農家の数が減って地域が合併されていくのと並行して、農協もどんどん統合され、地域の人から離れた存在になっていった。」

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「つまり、農協は日本の農業の盛衰と運命を共にしているということですね。地域の農業が衰退すると同時に、農協もまた衰退していく。その状態でさらに新たな課題を解決することができるかどうか…」

現代の問題に協同組合はどう取り組むのか?
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農協と生協の関係を示した図。生産者の協同組合には他にも『漁業協同組合』や『畜産農業協同組合』もありますが、今回は論旨をシンプルにするために農協の話にフォーカスしています。

恥ずかしながら今まで知らなかった農協のルーツ。国策として生まれ、戦後の農村の生業と生活をトータルで支え、そして一次産業の衰退とともに転換期を迎えている…

ヨーロッパの農業に関わる多様な立場の人と話してみてわかったこと。それは「グローバル農業にとって、生態系や安全性に関わる問題はめちゃくちゃ深刻」という事実でした。
大規模な農地に、単一の作物を植えて生産合理性を高めまくることで、例えば日本のどこかの県ひとつぶんぐらいの規模で土地や水が枯渇したり、汚染されて再起不能になる。

この集約的な農業は、当然ローカルな小さい農家を駆逐するわけで、国内の農業基盤が地盤沈下し、その代わり海外のどこかの農地が超高速でダメになっていく。
こういうハードコアな問題に対して、農家は、小売業は、そして消費者である僕たちはどうするのか?これは待ったなしの問題なわけです(今回訪れたヨーロッパでは特に)。

そこで僕が訪ねたような農家は、自分たちでCOOPをつくり、地元の小売業と連携して同じ問題意識を共有している消費者に作物を届け、農業体験や勉強会を通して立場を超えた学びの場をつくっている。

未だ主流にはなっていない未来の種を、『協同する』という方法論によってプロトタイピングしようとしている。これがヨーロッパにおいて1つの潮流になりつつあった。

さていっぽう日本はどうかというと、実はヨーロッパほど巨大な地盤沈下と農地の崩壊は起きていない。

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「あ、実はね、集約農業ができる北海道ではすでに農地が大規模にダメになる問題は起き始めているんですよ。
鹿児島では農地はあるけど少子高齢化で農業やる人がどんどんいなくなるという問題が進行しています」

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「日本では環境や安全性の問題に加えて、コミュニティの問題が大きいですよね。土地にしても世代の問題にしても『だんだんダメになっていく』という、切迫感を感じないままだんだん生茹でされるような状況が続いている。
この状況に対して、協同組合はどんなことができるのでしょうか?」

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「鹿児島県ってのはね、全国でもトップクラスに高齢化も進んでいるし、若者の貧困率も20%ぐらい。もともと多くない人口がさらに減っていく。これが何を意味するかというとね…ちょっとこの場で口にするのもためらわれるんだけど…」

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(ゴクリ……)

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「今あるような公共サービスが近い将来機能しなくなることを想定しなければいけない。農業支援はもちろん医療、住宅、教育とかね。国家の予算がどんどん減れば生産人口が少ない地域からパイが減っていくわけでしょ。

だから協同組合がインフラとしてちゃんと機能しなくちゃダメなんだよ。COOPだけじゃなくて、農協や医療や介護の協同組合も含めて、今まで別々だった協同組合が集まって、地域のためにできることをマジメに考えなくちゃいけない。

ということでね。
コープかごしまは、県内の農協や医療生協と連携事業の相談をしています。日本的なやりかたで、協同組合の新しい可能性を見つけるには、セクショナリズムを捨てなければいけないでしょ。」

hiraku

新しすぎる〜!!
それはつまり、地域にいる人が食べ物、仕事、医療、教育においてまるっとCOOPシステムでサービスをシェアできるということですよね。できたら超良いけど、実際それって可能なんでしょうか?」

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「可能かどうかというより、可能にしないと地域が消滅しちゃうかもしれないからね。
『協同』の理念があれば、消費者と生産者の距離を縮められる。距離が縮めればお互い助け合う気になる。そしたら小さな地域でも豊かな暮らしが実現できる。

今まで3年くらい各組合間で話し合いを続けてきて、ようやく危機感が共有されて次のステージにいけるかなというころです。」

hiraku

「それは要チェックすぎる。あの、僕も鹿児島に行って話し合いの現場を見学してもいいんでしょうか?」

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「いいとも!!!」

取材を終えてみて…

 

想像の斜め上を行く鹿児島の取り組み。
新しい社会課題への取り組みは過疎地や離島から生まれるのが最近のトレンドですが、COOPでも同じ傾向はあるのかもしれない。

これまで「いかにモノを流通させるか」という、どちらかというと都市の消費者から見た視点でCOOPを掘り下げてきたわけですが、「いかにモノをつくるのか」という生産者の視点から見ると、また違った課題が見えてくる。

COOP以外の協同組合も視野に入れながら、未来の社会のカタチを見ていきたいもんだぜ。だんだんDEEPになっていくCOOP男子、次回もお楽しみに!

【宣伝:COOP男子スピンアウトイベントに来たれ!】
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告知でーす。
大好評のCOOP男子、ついにリアルイベントになりました。
第一回はこのWEBサイトのプロデューサーでもある江副直樹さんを迎えて「協同組合の可能性」についてのトークで盛り上がりました。
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会場は福岡にOPENしたばかりのナイスな本屋さん、Rethink books。良い雰囲気。
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第一回はおかげさまで大好評でしたー!しかし一回目がここまで盛況だと、二回目が心配。なので、みんな二回目にもぜひ遊びに来てください(>_<)
↓第二回の内容は以下↓
『東シナ海の小さな島ブランド株式会社代表山下賢太さん、無印良品の『諸国良品』を担当する間野弘之さんをお迎えします。

山 下さんが生まれ育った鹿児島県甑島。人口が減り文化が衰退していく島の風景。そんな島を後世に残したくない。だから胸を張って受け継ぐことのできる島を取 り戻したいと一念発起で始まった山下商店。豆腐屋にはじまり、さまざまにその活動の域を広げる賢太さんの視界はどこまでもグローバルに広がっています。

そんな若き賢太さんと対談するのは、世界から愛される日用品ブランド「無印良品」の『諸国良品』の間野氏です。グローバルな商売だか らこそ、まずは足元から といわんばかりの地域との密な取り組みに精力を注ぐナショナルブランドの行く先とはどこ? 小さな商いと大きな商い。その両極から見える地域との関わり合 いと商いのお話です。』

 

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九州(とその近郊)のみんな、待ってるぜ―!

See you next…! 

 

 

 

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皆様から寄せられたコメント

  1. すごい!生協について学ぶ。
    おばちゃんには・・ちょー刺激だ。
    失われていく・つながり・
    話、かわるけど私が住んでいる団地には高齢者のかたが
    たくさんいる・・団地のなかに小さな公園があり夕方になると、どこからともなく集まってくる。変わりない?具合は?病気自慢大会になっている。でも・・集まる時間に顔がみえないとみんな心配になる。幼子・小学生も集まってくる。
    誰かが時間をきめたわけでもなく・・いい光景だ・・
    いつも思う。ここに生協が関われないか?と・・しかし組織するとなると、参加しずらくなるかな?気を使わない場所だから・好きなときに集まる・束縛されない気持ち
    う~ん・・意外と難しいかな・・とか・・でもこれからの高齢化社会にむけて。生協が関われる場所であることには間違いない。時間になると自然に公園にはいなくなる。しかし
    子どもたちが残っている。お母さんが仕事らしい・・
    ここにも生協の役割がある。様々なところに生協が見えてくる。
    すみません・・勝手にコメントしてしまいました。
    農協・医療・教育・・生まれてから死ぬまで生協が暮らしの
    真ん中にある・そんな生協でありたいです。

    1. こんにちは。メッセージありがとうございます。
      一昔まえのことを調べてみると、生協は地域のコミュニティのハブだったし、お母さんや子どもたちの暮らしのインフラでした。これがきっと生協の原点。

      新しい時代にふさわしい原点回帰を組合員の皆さまといっしょに考えていきたいと思っています。

  2. 食の安全を追及することは本当に大事なことですね❗
    このインタビューを見て作り手も買い手も基準を崩さずにいかなければならないですね。
    この考え方を大切にしたいと思いました。

    1. メッセージありがとうございます。
      食は暮らしの基本。大事にしていきたいし、ただ守るだけではなくて「さらにより良いもの」の問いかけを大事にしたいなあ…と常々思っています。

  3. 農協のお話が出てきますが、同じ協同組合でも、生協と農協では、必要な社会的な問題への発進内容がかなりことなります。力の弱い者が協力してという根底の考え方はかわらないと思いますが、戦後すぐ日本の食料を確保する農業の再生のため国策推進のために作られた農協の経過と、食べるものがないために買い出しを協力して行うなど下から消費者自身が作ってきたという、歴史的経過の違いがそうさせているのでしょうか。

    1. 今回のリサーチを通して、両者の歴史的経緯の違いに驚きました。仕事柄色んな地域に行くのですが、農業の問題はとても大きくて、農家さんも農協や漁協のスタッフも未来を真剣に考えている方がたくさんいます。異なる立場の人がいっしょに動ける仕組みをこれから実現していかないと!ですね。

  4. 世の中が希薄に成ってると感じる事が多い中、災害が有ったり窮地になったりした時には協同の力が大きいなぁと思うこの頃!
    CO- OP 男子ヒラクさんみたいに、いろんな事に目を向ける若者が増えてくれたら良いなぁと思います。

    1. ほんとそのとおりですね。
      若い世代なりの「協同のカタチ」は少しづつですが実現してきています。頑張るぞー!