夏が終わってしまった…。
朝夕の涼しい風が気持ちいい季節になりましたね。小倉ヒラクです。
さて、前回この企画のプロデューサーである江副直樹さんにインタビューするぞ!と予告したのですが、内容的にもうちょい後のほうが良さそうなので、今回は僕ひとりでちょっとインターバル。これまで全部で5つの記事を公開してみての振り返りと、今後どんなことができそうかの展望、そしてこの連載をご覧の皆様へのお願いをまとめておきまーす。
(ちなみに写真はこないだ神戸で撮影した「人間COOOOOOP文字」です。)
まったくの素人目線で、「そもそもCOOPって何ぞや?」を掘り下げていきました。そのなかで気付いたいくつかのことを簡潔にまとめておきます。
COOPの組合員数は2,621万人、世帯加入率は48.7%(2010年統計)なので、日本の全人口の1/4、全世帯の1/2がCOOPの組合員ということになります。これはつまり、生活品の流通における日本最大のインフラであるということ。
全国各地に展開するCOOP。それを統合するような経営本部的なものはなく、中心をもたないアメーバのように各地域のCOOPが独立経営をしています。これが全国に展開していった秘訣であり、裏を返せば「COOPといえば◯◯」というような共通認識ができにくい原因でもあります。
生産者の顔が見える、価格と配送の合理化、安全な品質の担保など、現在では「当たり前」になった小売・流通のモデルはCOOPが先駆け。ただし、先駆者として確立したモデルがあまりにも強固なために、イノベーションを起こすことができず、他のスーパーや宅配サービスと横並びになっているという現状も。
これが今回最大の発見。農村から都市部へのコミュニティ再編や女性の社会進出など、近代以降の「どのようなコミュニティで生きていくのか」という問題とCOOPの歩みは完璧に一致している。地域のコミュニティが解体されて核家族や個人に分解された「これからコミュニティどうすんの問題」を抱えた現代の混乱が、そのままCOOPにも当てはまっているわけです。
以上の要素が相まって、近年の「COOPってそもそも何だっけ?現象」が起きているわけなのでした。インタビューさせてもらった皆様のおかげで、ここまでは整理できたぜブラザー。
では次へ。
このCOOP男子企画をやってみて、色んなフィードバックがありました。それもまとめておきます。
COOPの専従スタッフの皆様、参考までにどうぞ。
南は長崎から、北は山形まで全国の組合員の人が読んでくれていることがわかりました。母体は九州なんですけど、特定の地域や組織にまったく縛られていない不思議な読み物になっていることが発覚。沖縄と北海道の組合員の皆様、読んでいたら声をあげてください。聞こえているか、アリーナ!
ふだんCOOPの商品を使っている人でも、なぜCOOPができたのか、何のためにあるのかを知らないことがよくあるそうです。よく考えて見れば、店頭や宅配で手にするパンフレットでは商品やサービスの情報しか載っていない。「コンセプト」に触れられるような入り口が開いていないのですね。(いちおう)デザイナー的立場から言うと、マーケティングはあるがブランディングはない、という状況と言えます。ルーツや理念がスゴすぎるので、もうちょっと色んな人に知ってもらえるといいなと思います。
「いやいや、ヒラクくんのこの企画って、そういうためにあるんでないの?」
はい、その通り。もっと頑張る所存です_| ̄|○ ←土下座
子供が生まれる or 生まれたばかりの僕の友だちから感想がたくさんありました。小さな子供がいるお母さんは気軽に買い物にいけなかったりするので、COOPは重宝するそうです。 「子供にも安心できる品質で嬉しい」というコメントも。これは「お母さんのためのCOOP」という共通認識が根付いている証拠。しかし、「どうやってサービスを使い始めたらいいのかわからない」という声も。デザイナー的に言えば、ユーザーエクスペリエンスがちゃんと設計されていない状況と言えます。確かに、僕も母親が使っていなければきっかけがなかったかもなあ…。
ユーザー側だけでなく、内部スタッフからのフィードバックもありました。各地域のCOOPのなかで、僕がここで書いたような課題を認識して動き出そうとしている人たちが少なからずいることがわかりました。「COOP男子を読んで、改めて自分の立ち位置や課題がハッキリしました」という感想、とっても嬉しかったぜ。
さてそんなCOOP男子企画ですが、論点を整理するなかで見えてきたことが色々とあるので、それもまとめておくぜ。
これから色んな人たちと企画を考えていく時に指針になりそうなのは以下。
日本最大のインフラということは、「大きなままでは動きにくい」ということです。
事業モデル全体に影響するようなものではなく、最小限の人や予算やスペースで始められて、結果が見えやすいことを小さなチームで頑張るトライアルが正解になります。小さいけれど、アイデアに溢れ、デザインセンスに溢れるチャレンジをどう設計するか。
この企画が始まってからすでに複数の地域のCOOPと関わっています。そこで感じたのは「枠を外すと自由になれる」ということ。Aの場所では当たり前なことが、Bの場所では非常識だったりする。色んな場所の色んな人たちが関わることで、面白いブレークスルーや対話が起きる直感があります。
「組合員同士が助け合って社会を良くする」というルーツをもう一度リデザインする事が必要だと僕は思っています。と同時に、COOP発足当時には無かった「環境」や「ローカル経済」のエコシステムを踏まえた事業モデルの構想も。この2つを掛けあわせて出てくる答えは、組合員が力を合わせて社会の未来を担保できる事業をつくる、ということになります。
そのきっかけになり、小さなチームでできて、地域や組織をまたいで展開できる提案。これがCOOP男子企画のゴール。
発酵デザイナー/アートディレクター
0歳からのCOOPユーザー。日本各地の郷土文化や発酵文化に関わるデザインを手がける一方、絵本を出版したり、微生物を育てるワークショップを行っています。この企画では「COOPを発酵させること」を目指し、リサーチや企画の過程をまるごと公開していきます。お楽しみに!