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【第三回】そもそもCOOPって何ですか?コープこうべ本木さんに聞いてみた<後半>

こんにちは!小倉ヒラクです。いや~、暑いですねえ。皆さま夏風邪引いたりしてませんか?

さて。COOP男子企画、気づいたら第三回。コープこうべの本木さんと一緒に「そもそもCOOPとは何ぞや?」を掘り下げていきましょう。どうぞよろしく!

本木 時久(もとき ときひさ)さん:コープこうべ執行役員。「次代コープこうべづくり」の旗振り役として、自治体やクリエイター達と様々な企画を手がけるプロデューサーとしての側面も。

で、COOPで具体的には何をやっているの?

ヒラク

「COOPって、事業としては何をやっているんですか?」

本木さん

「大きく分けると3つ。店舗の運営と、商品の配達と、共済です。」

※他にも、福祉介護、文化、旅行や葬祭事業を行うCOOPもあります。
ヒラク

「僕が使っているのは、1番めの配達サービスです。お店は、街で見かけるあのCOOPのお店ですよね。3つ目の共済というのは…?」

本木さん

「ケガをしたり、事故があった時に、掛け金に応じて保証が出るサービスです。保険のようなものですね。これも、COOPの理念である『相互扶助』の精神にもとづいてやっています。」

ヒラク

「なるほど~。僕としては自分の使っている配達サービスのことが気になります。これはどんなふうに運営されているのですか?」

本木さん

「これには二種類あります。『個配』といって、個人宅に届けるもの。もう一つが『班配』といって、団地などで何人かの「班」をつくって、そこにまとめて届けるもの。」

ヒラク

「!!!そういえば、小さい頃に近所のお母さんたちが班で配達してもらっていたなあ。」

本木さん

「そうなんです。この『班配』がCOOPの特徴的な事業なんですね。」

はいここポイント!

COOPのサービスの基本は「安全安心な品質の商品を、合理的な価格で届ける」。まとめて配達すると、配送が合理化されてそのぶん商品が買いやすい値段になります。COOPが全国に発展していった1970年代は、現在のような宅配向けの地域の流通システムが発達していなかったので、この手段で事業の合理化が実現でき、「宅配ならCOOP」というポジションを確立しました。
そして、この「班配」は、合理化とは別のメリットを生み出すことになったのです。

共同で購入する=コミュニティを形成する

本木さん

「例えば団地のお隣さん同士で配達を頼むでしょ。決まった曜日に誰かの家の玄関先やガレージに集まって、商品をまとめて受け取って分けたり、留守の方の商品を預かり合ったりしてたんですね。他にもたまごや果物を箱ごと安く買って皆で分けたり。その時に、コミュニケーションが生まれるんですよ。」

ヒラク

「おお~なるほど!商品を買うという行為が、コミュニティが形成されるきっかけになるわけですね。それは奥が深い…!」

本木さん

「そうそう。それで班のメンバーが集まると、商品の使いかたを教え合ったり、お互いが買った商品の情報交換をしたりする。その中から新しい商品のアイデアが生まれてきたりするんです。」

ヒラク

「とすると、前回出てきた『積極的に活動する組合員』というのは、商品のフィードバックをしたり、商品開発のアイデアを出すような人なわけですね。これはいい仕組みだなあ。商品を使う人が、自分のほしいと思うものを提案ができるわけだから、より組合の結束が強くなっていきますね。」

↑前回解説した組合員の種類↑
本木さん

「その通り。そうやって積極的に情報交換が行われていくうちにコミュニティが広がって、COOPは成長していったんだね。」

ヒラク

「その成長していった時期というのは…?」

本木さん

「だいたい1970年代~1980年代くらいだね。その頃はほとんど班配。個配が増えていったのは90年代から。働く女性が増えて、決まった時間に受け取れないケースが増えてきたという背景があります。」

ちょっとモヤモヤ…

うーむ。確かに個別に配達してもらったほうが便利だけど、でもさ、それだと他の食材通販の会社と何が違うの?ってなりませんか(←僕はなる)。 正直いうと、僕がCOOPを使っているのは親の習慣を受け継いだから。今回聞いたような背景を知らなければ「毎週一回届く使いやすい通販サービス」という認識になるわな。じゃあ、頼んだら翌日に届く、もっと商品ラインナップ豊富な通販サービスがあったとしたら…?

いまいちど、COOPのこれまでを整理してみよう

さて。
いい加減、顔写真を延々リピートするのもなんなので、今回取材したことを整理して僕なりに考えたことをメモしてみます。
(以下いきなり長文の社会論になります。コーヒーブレイクなどしてから心してお読みください)

創業期:大正時代に生活者の自治の運動として勃興

COOPのルーツは19世紀半ばのイギリスのロッチデール組合による社会運動から。
資本主義黎明期、庶民がマトモな食料や日用品を手に入れることができなかった状況で「みんなが協同して商品を仕入れ、それを組合員に分配する」という方法論が生まれます。これが海を越えて大正時代(1920年ごろ)に神戸の街にもやってくるのですね。
当時の神戸は、いち早く近代化した都市の一つ。当然明治以前にはなかった近代資本主義が入ってきます。
でさ、みなさま歴史の教科書で習ったと思うんだけど、初期資本主義ってとにかく「庶民の劣悪な生活環境」のイメージがあるじゃないですか。これは神戸でも同じような状況だったらしく、米とか醤油とか、そういう基本的な食べ物もロクに買えない。そこでロッチデール式の共同購入の仕組みを導入。そこで仕入れた品物を「購買さん」と呼ばれる生協の職員が、自転車で組合員の家々に届けて回っていたと。

おおお…!100年近く前からビジネスモデルが確立してるじゃんよ…!

こうして、「相互扶助の精神」にもとづいて、「生活者の自治」を守るCOOPの基本スタンスが確立されていきました。
(僕、この時代に生きたことないから想像でしかないけど、この仕組みはそのへんのおとっつぁんおかあちゃんには「暮らしの生命線」だったんだろうなあ…)

発展期:高度経済成長期にコミュニティの起点として発展

それでは時計の針を進めて、戦後の時代へ。
神戸などで確立されたCOOPのモデルが全国各地に広がっていったのが1970年代以降。この時、日本の社会では何が起きていたのか。
経済の超高速な発展の弊害として、企業による「公害問題」とか「食品偽装」が多発したそうな(これも歴史の教科書に出てきたな)。そこでお母さんたちの「安心安全なものを手に入れたいわYO!」という要望にこたえて、今でこそ当たり前になった「信頼できる生産者から直接仕入れた=産直」商品の流通の仕組みを広げていった。

…ん?もしかして…?

ありとあらゆる小売店が連呼する「安全安心ですよ!」「産直ですよ!」のルーツは生協じゃんよ…!

さて。では本木さんの話に戻ります。
「安全安全な商品」をあまねく組合員に届けるべし!と配送の合理化を図った結果、「班をつくってそこに届ける」という流通モデルにたどり着きます。

はたしてここに「時代にシンクロした事業モデル」の真髄があった!

↓それではヒラクによる分析をどうぞ↓

戦後、日本の農村コミュニティは解体されて、若者たちは都市に仕事を求めてやってきます。で、みんなサラリーマンになって団地に住む。その結果、会社と団地、あと地域の教育機関や公民館がコミュニティの起点になる。つまり、村から街へとコミュニティが再編される。COOPの「班配」システムは、つまりこの「コミュニティの起点」に商品を「まとめて」届けるわけです。

ここで何が起きるか。「COOPの商品が届く」ことがきっかけになって「寄り合い」が起こり「コミュニケーション」が発生していくわけです。これはつまり「村の寄り合いシステム」がアレンジされて新たなコミュニティに導入されたということ。
これが習慣化された時点で、COOPは単なる宅配サービスではなく「地域のインフラ」になる。だから日本全国に普及した。さらに、自分たちのインフラなわけだから、組合員たちは「自分ごと」としてサービスのフィードバックにコミットし続ける。その結果、さらにサービスが改善され、さらに組合員が増え…という「ポジティブスパイラル」が起こっていったのがこの時代だったのではないか…という仮説。

ふたたび模索期:次のコミュニティのカタチはなんだろう…?

そして時計の針が再び進み、現代へ。さて社会のコミュニティのカタチはどのように変わったか。
まず、終身雇用の仕組みとともに、会社コミュニティは著しく衰退した。そして、かつてあった(らしい)団地や地域のコミュニティも危うい。つまりだな、僕たちはコミュニティから切り離されて、個人としてふわふわ漂うようになった

COOPはそもそもの経緯からして、コミュニティ単位で成立する事業モデル。
しかし、高度経済成長期型のコミュニティが崩壊した今、いったいなにができるのだろうか?

江副さん
江副プロデューサー

「あーそうなんだよねー。それでまずはヒラク君を呼んでみようかなと思ったわけ」

「マ…マジすか…!」

第三の創業期に、COOPが未来のためにできること

※クリックしたら拡大します(PCのみ)
ヒラク

「…ということで、僕が思うにCOOPは『第三の創業期』を迎えていると思うんです。最初は、大正時代の資本主義黎明期。次に、高度経済成長期のコミュニティ再編期。で、今のコミュニティ衰退期。ここで新しい活路を見いだせるかどうか。COOPの未来はここにかかっていますね。」

本木さん

「ヒラク君、なかなかいい事言いますね!僕たちの課題として『地域のコミュニティとどう向き合うか』があるわけです。僕たちが『次世代コープこうべづくり』として取り組んでいるのが、自治体やNPOなど色んな立場の人たちと、神戸をはじめとして、コミュニティの未来を一緒に考えていくことなんですね。」

ちなみに取材に行った日は、本木さんチームと神戸市の職員やNPOの人たちが一緒に『未来神戸会議』というプロジェクトの打ち合わせを行っていました。

で、写真右の彼は僕の友人で『NPOミラツク』代表の西村勇哉(にしむらゆうや)さん。本木さんたちと一緒に「地域のコミュニティのこれから」を考えている仕掛け人です。西村さんも近々COOP男子としてこの連載に登場予定。お楽しみに。

さてさて。
これでいったん「そもそもCOOPって何ですか?」の回はおしまい(本木さん、ありがとうございます)。
まだまだ語るべきことはたくさんあるのですが、なんとなーくCOOPのアウトラインが掴めてきたのではないでしょうか?知れば知るほど、COOPは他に類を見ない不思議な存在。ビジネス組織であり、同時にコミュニティのインフラでもあり、何より消費者運動のイノベーターでもある。そして現代の混迷期のなかで、いったいCOOPの役割とは何ぞ?という話の前に、今度はCOOPのサービスをもっと詳細に見てみることにするぜ…!

See You Next …!!

次回予告:「小倉ヒラクのCOOPとなにしよっか?」はだいたい毎月1日・10日・20日あたりに更新予定!次回は実際にCOOPの商品を使っていきます。どうぞお楽しみに!

PROFILE
小倉 ヒラク
Hiraku Ogura

発酵デザイナー/アートディレクター

0歳からのCOOPユーザー。日本各地の郷土文化や発酵文化に関わるデザインを手がける一方、絵本を出版したり、微生物を育てるワークショップを行っています。この企画では「COOPを発酵させること」を目指し、リサーチや企画の過程をまるごと公開していきます。お楽しみに!

http://hirakuogura.com

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