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【第八回】greenz編集長に聞くCOOPの未来<後編> COOPはソーシャルデザインだ!

すっかり秋も深まり、コートの襟を立てて歩く季節となりました。みなさま風邪などひいていませんか?

さて、賛否両論様々なコメントがあったCOOP男子greenz編、今回は「COOPとソーシャルデザインの関係性」について考えてみます。
実は前後編で考えていたのですが、予想外の展開となったためこの話はさらに次回に続いていくことになりました。詳細が気になる人は最後までお読み下さいませ。
(ちなみに「毎回長くて読むのがしんどい」という感想がいくつかありました。気合が入りすぎてついつい長くなっちゃうんですが、今回はいつもよりちょっとだけ短いです)

左:鈴木 菜央(すずき なお)さん / 右:兼松佳宏(かねまつ よしひろ)さん。”ほしい未来”をつくるためのヒントを発信するウェブマガジン『greenz.jp』の共同編集長。世界中の”共感”を呼ぶグッドアイデアを紹介・発信しています。

サイト:http://greenz.jp/

COOPの『ミーム(文化的遺伝子)』

兼松さん

「COOPって食品だけしか扱っているわけじゃないよね。例えば学童もやってるじゃない?」

ヒラク

「もともとは共済=助け合いの仕組みから始まっているから、そういう福祉やコミュニティづくりに関わりを持っています。」

鈴木さん

「『みんなで助け合う』という協同組合の仕組みは、資本主義の社会をハッキングするためのDNAとして生まれたんだと思う。みんなで出資して助けあってものを買うというDNAを食品だけじゃなくて保険や住宅にあてはめてみる。そうすると住宅ローンが組めるようになって僕でも家が買えるね!ってことになる。こういう発想でイギリス・ロッジデールの活動が発展していった。今僕たちがやるべきことは、一度大元のDNAを見つめなおして、今の時代にフィットするように作りなおすことだと思うんだ。」

なるほどー。ナオさんの話を解釈しなおすと、COOPの本質は組織ではなく「みんなで助け合う」という仕組みそのもの=COOPのDNAだと。さて、ではそのDNAをどのように未来へと運んでいくのか。

二人の表現を借りるならば、「ミーム=文化的遺伝子」を見出し、デザインしなおしていくかということになります。それは具体的にはどんなことなのでしょうか?

社会をCOOP化する

兼松さん

「COOPの本質を伝えるミームをどうやって見出すのか。例えばね、社会のなかで機能していないインフラがたくさんあるわけじゃない。だとしたら、その機能していないインフラにCOOPの『みんなで助け合う』という共済的な方法論を導入していく。その時にCOOPが今まで積み上げてきた資産や組合員のネットワークを活用する。」

ヒラク

「つまり、COOPによるベンチャーキャピタルのような…」

兼松さん

「そうそう。社会のなかで硬直化しているもの、縦割化しているものをCOOP化するという発想。スマイルズの遠山さんが言っていることでね『世の中の残念なものをなんとかしたいから事業をやっている』というのがある。残念なレストランとか、残念なリサイクルショップとかね。なんでこんなことになっちゃうんだろうなというものに風穴を空けていく。」

ヒラク

「なるほどねぇ。……で、それって実はgreenzがやっていることだったりして。」

兼松さん

「そうなんだよ!greenzの役割は、「なぜか当たり前になっていること」への違和感をしっかり見つめて、一緒に解決策を考えていくことでもあるので。」

鈴木さん

「COOPにも課題はある。戦後60年もたって大きく成長していって組織が硬直化している、レガシーになっているというところは否めない…」

兼松さん

「裏を返せば、COOPがもしレガシーな状態から変わっていけば、社会のインフラを変えられる部分がたくさんある。食のことだけではなくて、子供のこととか、教育のこととか、福祉のこととか。僕が興味があることは、社会の課題をCOOP化することでもっと共感できる、使いやすいようなものにしていくこと。」

鈴木さん

「ほんとそうだね。『greenzはCOOPみたいな仕組みをつくりたいよね』って話していたぐらいだからね。」

COOPってソーシャルデザインではないかという問い

YOSHさんの着想、聞いたときにはっとしました。COOPをどうするかという考え方だと結局組織論や現状追認になって「とはいってもやっぱり変わるのは無理」となってしまいがち。ところが社会をCOOP化するという発想をとってみると、できることの可能性が広がって見えてくる。

ナオさんの言う「ミームをどう伝えていくか」という話とあわせて考えてみると、誰かが利己的に振る舞って利益を総取りする部分最適ではなく「みんなで助けあって社会を良くする」という全体最適のモデルとしてCOOPをもう一度見出すということだ。

ん……?これってつまり、

COOPってソーシャルデザインの方法論

なんじゃないのかしら?社会のいろんなところにある「どうしてこんなことになっちゃったんだろう?」というものを、みんなで助け合いながら使いやすく、共感できるものに仕立てなおしていく。

想像してみれば、おそらく日本で大正時代にCOOPが始まった時、オリジネーターたちはきっとgreenzのような志と行動力をもった「ソーシャルデザイナー」だったに違いない…

鈴木さん

「いや~、好き勝手色々話してみたけど、自分たちだけで話していてもよくわからないから、ちょっとCOOPの始まりを見てみたいなあ。」

ヒラク

「じゃあCOOP発祥の地の1つ、神戸に一緒に行ってみます? はたして『COOPのミーム』とは何か、考えてみよう!」

ということで、次回は舞台を東京からいま一度に神戸に移して『日本におけるCOOPのミーム』を探してきまーす。
See You Next…!

PROFILE
小倉 ヒラク
Hiraku Ogura

発酵デザイナー/アートディレクター

0歳からのCOOPユーザー。日本各地の郷土文化や発酵文化に関わるデザインを手がける一方、絵本を出版したり、微生物を育てるワークショップを行っています。この企画では「COOPを発酵させること」を目指し、リサーチや企画の過程をまるごと公開していきます。お楽しみに!

http://hirakuogura.com

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