お盆が過ぎ、夏の終わりの気配が漂ってきました(←僕の住む山梨の山の上では)。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。COOP男子の小倉ヒラクです。
さて。今まで三回に渡って「そもそもCOOPとは何か?」を掘り下げてきましたが、「読むのが大変!」という感想もあったので、今回は比較的ライトにいきたいと思います。
ということで、テーマは「実際に商品を見てみよう」。COOPの代表的な商品を取り上げつつ、思ったことを色々メモしていきまーす。
ということで。今回お話を伺ったのはコープ九州事業連合の森谷さんと迫田さん。
「COOPといえばコレ!」という商品ってなんですか?
「地域によって色々と違うとは思いますが、そうですね…。例えば牛乳や卵ですね。これは九州のコープの原点のような商品です。」
「それは何ででしょう?」
「かつて(高度経済成長期)の頃は、薄めた牛乳や、安全かどうかわかならい卵が流通していました。そこで、安心できる生産者さんの顔が見える、品質のしっかりした牛乳や卵をCOOPで扱うことにしたんです。」
「おお、つまり『産直』の走りなわけですね。他には?」
「冷凍のお肉や、骨抜き魚なんかもそうです。80年代から、加工品を積極的に扱うようになりました。」
「あっ、そう言えば…。僕が子供の頃、実家の冷凍庫に入っていたな。働いているお母さんには便利だったんでしょうね。食べ物以外では何がありますか?」
「トイレットペーパーや、ティッシュも定番商品です。再生紙を使ったり過剰包装をなくしたりといった工夫を他のブランドに先駆けてやってきました。」
「あ〜、これも実家にあったな。紙の箱じゃなくて、ビニール袋に入ったティッシュペーパーね。」
なるほどなるほど。そういえば僕の記憶にもあるものばかり。
というわけで、さっそく僕の使っている「パルシステム山梨」で、該当しそうな商品を届けてもらいました。
(ちなみに山梨の各COOPでも、この「COOP男子」けっこう読まれているみたいです。組合員の皆さま、どうもありがとう〜!ページ下のウサギの問合せフォームから何かコメントくれると嬉しいデス。)
今回注文したのは以下の6つ。
ヒラク母は佐賀県出身ですが、ヒラク父は北海道出身。それもあってか牛乳をよく消費する家庭でした。
子供の頃、冷たい牛乳をそのまま飲むのが楽しみでしたが、おお、ヒラク母よ、良い牛乳をセレクトしてくれてありがとよ。
あと卵ね。これはパルシステム山梨の取り扱うなかでも、とりわけこだわりの卵。平飼いというのは、鶏舎に閉じ込めるのではなく、地面に放してストレスの少ない状態でニワトリを育てること。黄身に弾力があって、食べごたえのある卵です。
ちなみに僕は、お風呂あがりに美味しいゆで卵をつくってビールを飲むのが人生の幸せだと思っております(←茹で加減は「やや半熟」が好き)。
ああ、これも小学生の頃を思い出す。
またもや個人的なエピソードですが、僕の両親は共働き。しかもフルタイムでハードに働いていたので、食べ盛りのヒラクが「お腹減った!」というと、母が魚やお肉の加工品でさっと何か作ってくれたものでした。
(超余談ですけど、僕の母は料理があんまりうまくなかったので、なおさら重宝していたのかも…)
でもってミンチ肉ね。うちの冷凍庫にはいつでもこれが入っていて、週末の夕方になると親父と一緒にこれを使ってハンバーグをつくるのが楽しかったなあ。
(父は、母とちがって料理上手だった…)
考えてみれば、僕の子供時代は「遅くまで開いている店」が少なかった。フルタイムで働いていると頻繁に買い物に行くのは難しい。なので、冷凍食品や加工品をストックしておくのは便利だったんだろうね。
我が家のティッシュペーパーといえば、花柄の紙箱に入った大手メーカーのものでなく、素っ気ないビニール袋に入ったもの。友だちの家にいくと、「おお、お洒落なティッシュがあるな…」と思ったものですが、大人になって独立しても結局使っているのはこれ。
デザイナーとして考えてみるとだな。洒落なパッケージをデザインするよりも、なるべくゴミが多くならないように機能を合理化する方が僕の好みなんだよね。
最後にトイレットペーパー。まず再生紙100%。そして紙芯なしでホルダーに取り付け可能で、芯がないぶん巻きの密度が高いので、取替え回数も少なくなるし、輸送コストも合理化される。
うーん、よくデザインされているなあ。
ということで。定番商品を使ってみての『COOPの商品コンセプト』的なものを、ヒラク視点でまとめてみました。大きく分けで以下の3つだと思うんですけど、組合員の皆さまどうですか?
牛乳や卵が象徴的ですが、野菜や果物、肉などもそう。生産現場や生産者を見えるようにする=産直であることで、安全であるということ根拠を示し、それが安心につながる、というコンセプトですね。
80年代といえば、女性の社会進出が本格的になっていった時代。ヒラク母がまさにその典型で、フルタイムで働きながら子供を育てるには、ある程度炊事のプロセスを簡略化=加工品の利用や、長い時間ストックしておける=冷凍品の利用をする必要があったわけです。
環境に負担をかけないようにリサイクル資源を活用したり、配送を合理化することで買いやすい値段にしたりと、合理化の精神を強く感じます。「組合員みんなの暮らしに役立つように」という100年変わらない理念を感じるぜ。
うーん。ポイントをまとめてみて思ったんだけどさ。
これって、必ずしもCOOPでなくてもいいんじゃないか?
大手スーパーにも「産直コーナー」や「有機食品コーナー」があり、食品加工技術は進化を遂げて保存料や添加物を使わない加工品も市場に出回っていて、配送や資源の合理化もほとんど「商品開発における前提」になりつつある。
それを最初の頃に広めたのがCOOPだったのかもしれないけどさ…
…(モヤ)。
……(モヤモヤ)。
…………(モヤモヤモヤモヤ)。
あ、わかった。これはつまり「社会がCOOP化した」ということなんだ。
ちゃんとした商品がなかった時代に、COOPは「こんな商品をみんなが使える社会がいいな」という理想を掲げて、商品開発や流通網の仕組みをつくった。
そしてそれが圧倒的に支持されたので、マーケットの原理により、他のスーパーや通販会社がCOOPの確立した方法論を取り入れる。やがてその方法論は、「特別」から「前提」になる…
と・い・う・こ・と・は!
高度経済成長期に掲げたCOOPのビジョンは、NOW実現した、ということではないか?
「こうなったらいいな」が叶えられた。つまり、僕たちは「ポストCOOP時代」に生きているのではないだろうか?
前回でも話題になった「第三創業期の難しさ」は、コミュニティの問題だけではなく、商品や事業モデルにおいても当てはまる。品質や流通という意味においては、COOPの方法論は社会一般に受け入れられ、スタンダードになった。
となると、次に待っているのは「では改めてCOOPの存在価値とは何なのか?」という本質的な問いなのであるよ。
「ヒラク君、なかなかわかってきたじゃないか。今僕たちは、そこに向き合わなければいけないんだ。」
「ややッ!あなたは一体…!?」
See You Next …!!
次回予告:「小倉ヒラクのCOOPとなにしよっか?」はだいたい毎月1日・10日・20日あたりに更新予定なんだけど、毎回気合をいれすぎて、この頻度では更新し続けられないかもしれません(>_<)
次回はコープ九州事業連合の番頭、江藤さんとのぶっちゃけトークをお届けする予定。どうぞお楽しみに!
発酵デザイナー/アートディレクター
0歳からのCOOPユーザー。日本各地の郷土文化や発酵文化に関わるデザインを手がける一方、絵本を出版したり、微生物を育てるワークショップを行っています。この企画では「COOPを発酵させること」を目指し、リサーチや企画の過程をまるごと公開していきます。お楽しみに!