コープ職員ルポ
2016年9月18日~9月23日、コープ九州の会員生協の役員のみなさんとのアメリカの大豆生産者ボブさんを訪ねた。2015年の第一陣に続き、今回は長崎のララコープ、コープさが生協、生協くまもと、コープおきなわの4生協が参加した。
ボブさんが代表をつとめるSB&B社で生産されている大豆は、育て方が把握でき品質がよい大豆生産のしくみを生協とともに築いてきた存在。その実態を会員生協代表の方に肌で感じていただき、生産者とのつながりも強化していくことを目的に訪問した。
ボブさんからSB&Bの成り立ちと現在の会社の形態・理念などについて説明。参加の皆様からの主な質問・感想は以下の通り。
・SB&Bで開発した品種は契約農家だけに供給しているのか。
ー「契約農家だけに供給している。契約外の農家からも買いたいというオファーはあるが断っている。」
・アメリカ国内でもNonGMO大豆の需要は拡大しているのか。
ー「食用としても増えてきているが、飼料用の会社でもNonGMOを求めるところが出てきている。また、あくまで正式なデータに基づくものではないが、アメリカのNonGMO大豆の6~8%がSB&B社のもの。」
・アジアでのNonGMO需要が高まってきている(台湾、ベトナム、韓国など)との事だが、それぞれ一部の国民の需要なのか、それとも国全体の風潮としてのものなのか。
ー「台湾は昨年表示が義務付けになり、韓国も法律化されている。ベトナムは一部の富裕層が欲しがっているのみ。」
・生協や組合員との交流について。
ー「生協の組合員のように感謝の意をもって迎えてくれることは、他では受けたことが無い。実際話してみると、家族やSB&B(生産者など)にも興味を持ってくれている。普通は商品メーカーに興味を持つことが多いと思うが、生産者である自分達に興味を持ってくれることは非常に嬉しい。いろいろな生協で組合員の話を聞くことは非常に感動的で、直接交流して意見をもらうことが非常にためになっている。大豆を使った新しい商品があれば、生協と一緒に開発していきたい。」
・ボブさん以外の生産者は“日本の生協”“生協組織”のことを理解しているのか。
ー「数年前から生産者を連れて日本をまわる取組みをしている。実際交流した事、感じた事、消費者(組合員)の事をアメリカに帰ってまわりの生産者に話すので、そういったことから理解が深まっていると考えている。」
・今まではボブさんは生産者の一人という認識だったが、今回訪問させていただいて生産者、消費者、従業員、市場環境などをとても多面的に強く考えている経営者としての面も強く、とても共感している。会社の代表として経営面を考える立場と、生産者の立場では、ボブさんはどちらの立場を中心としているのか。
ー「当然リーダーではあるが、チームの一員としか思っていない。子どもの頃から農業に携わってきており、生産者という思いが一番強い。」
SB&BとNCI(Northern Crops Institute 後で紹介します)など外部機関との研究で様々な品種が試験的に栽培されている。最終製品それぞれにあった特徴を持つ大豆、大豆自体の収穫効率を上げるための品種改良等が目的となっている。一箇所ではなくいくつかの圃場があり、地域別、季節別での栽培を行っている。
2004年設立でNONGMO大豆、オーガニック大豆、小麦などを扱っており、設立当時最新式のプラント。マネジャーのジェフさんをはじめとし6人の従業員がおり、基本的に週5日、繁忙期には週4日の24時間稼動となっている。最初の2時間は全機械のチェックを行い、それからの選別開始となる。
選別前の大豆はサンプリング検査を通った後、一旦工場内のサイロに入れられるが、工場に持ち込まれる前は、各農家のサイロに保管されている。生産者から工場への受入計画はノースダコタ地域の圃場の管理などの責任者であるスコットさん(ボブさんの息子さん)が策定。各農家での大豆の管理状況や品種を把握し、オーダーが入ってから対象生産者を確認し工場に搬入するのだが、収穫時にサンプルがスコットさんに提出されすぐに検査を行う。管理状況を把握し、先に述べたブルーマー工場と同じように受入時のサンプリングを行う。
またオーガニックのアメリカでの定義については下記の通り。
・除草剤を使用していないこと
・害虫駆除剤を使用していないこと
・非遺伝子組換えであること
・化学飼料を使用していないこと
・栽培前3年間の薬不使用期間があること
その証明については現物サンプリングではなく帳票による検査となる。アメリカの店舗などではかなりオーガニック認証の商品が並んでいたが、作物全体に占める割合は約2~5%とかなり少ない。ちなみにこのキャセルトンの選別工場はオーガニック認証工場で、ブルーマー工場はまだ認証を受けていない。
1983年、ノースダコタ州立大学内に設立された独立機関。設立にはボブさんのお父さんやボブさんも関わっている。主にノースダコタ、サウスダコタ、ミネソタ、モンタナの4州における農産物の世界各国への供給のため、それぞれの農産物(主に穀物)の研究を行なっている。大豆においても品種改良の為にこの機関が重要な役割を果たしてきている。豆腐に関しても、その製造に適した品質の大豆に品種改良するための研究が行なわれてきた。
今回8月に入ったばかりという豆腐製造の新しい機器を使った研究用の豆腐の試食が行われた。各種データ取得のための豆腐試作ということもあり、味や食感は正直やや劣っていたことは否めないが、製造工程は日本の豆腐と同じで、研究者の熱意も充分に伝わるものだった。
この機関の最大の目的はこの地域の生産物が世界に供給されることである。先の視察にあった試験圃場での多様な品種の栽培テストもこの期間と一緒に取組まれており、参加いただいた皆様にもその役割と存在意義が分かっていただけたようだった。
2016年度もノースダコタ、ウィスコンシンともに大豆の出来が良いとの事。ボブさんの「生協の取り組みは特別で、消費者(組合員)やお店での交流の際に直接していただく話の数々がモチベーションとなっている」といった言葉には重みがあり、実際それがあるからこそ成り立っている関係だと考える。今までの取組みの継続がこの関係を維持していく為にも重要であり、コープ九州のみならず会員生協の協力と理解が大きな要素となっていることを理解いただけたのではないかと思う。