Vol.2 イギリス>ひとりひとりに良いことを。より良い社会を。

世界最大の単位生協


イギリスのThe Co-operative Group (以下CG)は同国内の生協事業の9割を占め、世界においても最大の単位生協。継続して行って来た各生協との統合と、近年完了した中堅チェーンストア「サマーフィールド」の買収により、この3年で堅調な成長を見せている。

CG全体の紹介をまず述べたあとに、今回訪問したロンドンの3 つの店舗についてレポートする。

CGの特色と強み

CGの活動分野は小売だけでなく、金融、保険、旅行、薬局、葬儀など多岐にわたり、小売においては食品のほかに衣料、雑貨など幅広い商品を扱っている。

およそ6百万人にのぼる会員は、CGの業績に応じて毎年配当金が支給され、経営や運営へ発言する権利が与えられている。これらは非常にユニークなシステムであり、会員たちに、自分たちが価値ある存在であることを認識させるとともに、実際に現場で就労する者たちや、管理職など事業に携わる側へも的確な自覚とプレッシャーを与えているようだ。

CGの市場占有順位はイギリスの小売業界ではテスコ、アスダ、セインズベリー、モリリンズに次ぐ第5位。しかし葬儀業界においては国内最大のビジネス規模を誇っており、再利用可能エネルギーを自給している世界最大の企業でもあるという。

昨年のCG全体の売上げは前年比9.1%増の137億ポンド(約1兆7700万円)で、その内訳は食品58.4%、金融19.4%、薬局5.9%、葬儀2.4%と続く。「1つの郵便番号あたり1つの店舗がある」とその流通網のきめ細かさに胸を張るCGは、国内におよそ5千の拠点を擁し、11万人を雇用している。食品に限れば全国2883の店舗に1週間あたり合計1700万人が足を運んでいるという。

昨今の会員の活動は買い物をし、配当を得るという循環に甘んじているだけではないことも、CGは強調している。その例として去年は2百万を越える会員が、配当金の一部または全部をチャリティに寄付し、その額は3百万ポンドにのぼった。

前述のすべてをCGは「小売分野の競合他社との比較における、我々の強み」と認識しており、特に食品の売上げが昨年、前年比6.2%増の82億ポンドに達したことを挙げ、「この数字は経済や景気の先行きが見えず、購買力の自信喪失が指摘される環境下にあっても、消費者が『CGは信頼できるブランド』と支持してくれたことの証。同時にこの数年間の我々の政策が間違っていなかったことを裏付けた」と分析している。

これらの実績を受けて、今春CGは「1844年の創設以来受け継いできた“静かな革命”を推し進める『3カ年徹底改革プラン』」を発表。環境、倫理的適正、世界的貧困、動物福祉、社会的平等、健康、地場産業の各分野の改善にさらに励むことで、ひいては「イギリスという国をよりよくしていけるはず」と唱えた。

そのための具体的な政策としては「CO2削減量を2006年からの比較で達成した20%をさらに下回る、2017年までのマイナス37%」、「持続可能なデザイン、建築、オペレーションにおける新たなスタンダードを設定する本社を2012年内に開設」、「包装紙や梱包材料による環境へのインパクトを来年中にマイナス10%、また2013年内には店頭で配布するビニール袋をマイナス75%」、「商品として売られている食肉の動物が、もともと農場でどのように育ってきたかを見られるiPhone専用アプリケーション”Grown by us”の開発」などが挙がっており、その決意のほどがうかがえる。

Strand店(コンビニ型)

中型ターミナル駅前にあるStrand店は240平方フィートの典型的なシティコンビニ型。ざっと見渡した限りでは、日本のコンビニと遜色ない品揃えだ。日本にあってここにないものを強いて挙げれば、大掛かりなコピー機と宅配業者むけ伝票筆記台くらいのような気がする。

逆に日本になくてここにあるものは、焼きたてパンをむき出しで売るコーナー、数多く設置されたレジ、そしてコープ会員を募る入会申し込み専用カウンターだろうか。場所柄ラッシュアワーとお昼休みの時間帯には整理番号順に対応しなくてはならないほど、一気に客数が増えるらしく、セルフレジも2台用意されている。

朝と昼のピークにはさまれた時間帯には、近所の工事現場で働く人からオフィスワーカー、小さな子連れの親などさまざまな客層が混合する。そこも日本のコンビニと似ているかもしれない。

商品の配列で面白いのは、入店して目の前にまず広がるサンドイッチ、ポテトチップ、お惣菜など彼らが呼ぶところの“スナック”。「1時間しかないお昼休みに、さっと来てさっと選んでさっと買って行く人のために」最も目につくところに陳列しているのだそうだ。そのあと生鮮、野菜、パンと続く。非食品は動線で最も遠い場所に集積されている。

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1)往来の激しい道に面したコンビニ型のStrand店。

2)レジ係は会計の際、顧客に必ずコープ会員かどうかをたずねるという。

3)コンビニながら店内で焼きたてのパンを提供。

4)ピーク時に備えて多くのレジが並ぶ。

Paddington 店(中型店舗)

中心からやや離れたエリアにあるこの店の客層は、ほとんどが固定客で、飛び込みや新規は極めて少ない、典型的な地域密着型。ロンドンエリアのコープの標準規模の3500平方フィートで、食品、雑貨、文具、雑誌、台所用品など日常生活に必要なものが一揃え並んでいる。

天井、柱、壁を利用してコープのポリシーを謳うものや、売り場案内の告知などのPOPがやや過多な空間の中で、アピールしたいホームメイドパンの売り場だけは、ナチュラル木材の什器を用いて回りとのコントラストを見せ、うまく印象づけていた。

レジの数は、やはりこの店でも多い印象。その前に並んで作るよう誘導される列が、直線でなく蛇行を描くようデザインされている点も新鮮だった。英国全土のコープの店舗で、同じ内容が同時に流れているというコープ専用ラジオ局からの音楽やパーソナリティの声が、店との一体感をさらに演出していて、うらやましくも思った。

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1)今回案内してくれた地方マネージャーのAdi Nathan氏。

2)Paddinton店は周辺の庶民のくらしの大きな支えのひとつ。

3)レジまでの通路を低い商品棚が誘導する作りになっている。

4)入店後最初に目に入る店の内観。POPがとても多い。

Bow 店 (ガソリンスタンド併設店)

Paddingtonからほぼ反対の方向に位置するBow店は、CG傘下のガソリンスタンドチェーンTexacoのスタンドに併設された2800平方フィートの店舗。

ここの興味深い点は、スーパーとスタンドのそれぞれの機能に主従関係はなく、どちらかが目的で訪れる人と両方で用事を済ませる人が混在していること。1日あたりおよそ2000台が給油するという便利な立地も奏功し、この店舗モデルは最も延びているケースの一つで、競合チェーンにも注目されているそうだ。

「英国ではまだパーキング付きのコンビニはほとんどない」ことから、車で乗り付けた客を狙った、ダース売り飲料も売上げが好調という。ガソリンスタンドなのにも関わらず、アルコール売り場の面積がかなり広いことも、それでうなずけた。

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1)ガソリンスタンドの奥に構えるBow店の外観。

2)買い物のみの客は徒歩での来店が多い。

全体に共通していたこと

(1)コープの自慢の1つである点字つきパッケージ。頭痛薬や人気のケーキなど、顧客が手に取る頻度の高い商品に積極的に採用している。好評を博したためか「他の小売チェーンも追随している」という。

(2)レジの前には必ず1ポンドのインド製のコットンエコバッグを揃えており、袋を持参していない買い手には勧めるようにしている。

(3)充実したPBの品揃え

PBの取引先として選ぶ基準に高い社会責任感と倫理的認識の有無を置いている。その基準をクリアしかつ同じ状態を持続するため、その生産工場の責任者らを指導する出張ワークショップなどの企画と主催も行っているという。

PB商品開発において最もCGが自負しているのは、動物福祉、フェアトレード、国内農家と生産者への強いサポート。冷凍、生を問わずPBとして扱っている豚、牛、鶏、ダック、七面鳥に関しては、現在100%が国内産で、ベーコン、ハム、ソーセージ、ガモン(薫製)、ハムにおいては1種類を除いてすべてを国内産の肉のみを用いて作っている。

生鮮食品や野菜だけでなくワインやビールにおいても、PBであればどれにも同じように「買い手にとって商品の選択が最もシンプルになるよう」誰がどのように作り、どのような経路でこの店頭に並んだかがひと目で分かるよう工夫されたラベルデザインが適用されておいる。「走り回って育った鶏のたまご」「毎日出荷される国産の草で育った乳牛からのミルク」など、買い手にアピールするフレーズが満載だ。“I’m new”, “Grown by us”などパッケージが買い手に話しかける話法を前面に出していることも、共通して目立つ特徴だ。

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1)採用後、好評だった点字入りパッケージ。

2)各レジの前で売られている1ポンドのインド製エコバッグ。

3)PBのサーモン。信頼できる環境とそこで育てられた魚、と謳っている。

4)フェアトレードかつ生協オリジナルの南アフリカ産シャルドネ。トレーサビリティも保証。

ライバル社の動き

コープを含めた競合チェーンに共通した最近の出店戦略は、コンビニ型ストアの積極展開。地域にうまく浸透させ、“後から来たテナントとして浮かないように”するためもあり、地元の人々に長い間親しまれ、記憶されていた場所をあえて選んで入居する場合もあるようだ。例えば小さな銀行の跡にセインズベリーのシティマーケットが開店したが、外壁は銀行の面影を残したままのデザインを採用しており、配慮が見える。

テスコなどでは、賃貸契約する際にその名前を出さないで契約するため、直前までそこにテスコのコンビニ版が入ることを大家が知らなかったというケースもあるという。不動産部門も好調なCGでは、競合チェーンに物件を貸しているところもあるそうだ。

考察

世界最大の単位生協だけあり、老若男女すべての暮らしを取り巻くあらゆる分野において、よりよい状態で、かつ少しでも広い範囲で関ろうとする努力を強く感じた。

そこからイメージしたのは太陽系のなりたちだ。太陽が我々の暮らしであり、回りをめぐるさまざまな星たちがそれぞれの分野である、とは言い過ぎだろうか。会員同士の高め合いだけでなく、それぞれの分野が生活者の観点から情報を交換し、切磋琢磨して相乗効果を生み出すことで、結果として会員の生活の質の水準を全体的に押し上げることにつながっているように思えた。

以上

こぼれ話

2年ほど前、コープマルタ(Malta)の代表団がロンドンのコープを訪れ、捕れ過ぎて困っているマグロをうまく利用するアイディアはないだろうか、と相談に来たという。彼らからは適確な提案はできなかったというが、日本がそこに手を挙げるのはどうだろうか?ぜひ、プレリサーチに行ってみたい。

 

2011年6月20日 久世留美子

 

PROFILE
久世 留美子
久世 留美子
Rumiko Kuse

東京生まれ
フェリス女学院短期大学家政科卒業
ニューヨーク州立ファッション工科大学(FIT)広告&コミュニケーション学部卒業

92年秋よりミラノでフリージャーナリスト活動開始
97年秋よりパリ在住
08年10月、Luminateo Inc.を東京に設立
日本と欧州におけるプロデュース、コンサルタントが主業務

プロフィール詳細

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皆様から寄せられたコメント

  1. 私は、流通サービスという会社
    にいます。
    日本の生協委託は、ナンバー1
    だそうです。
    再生可能エネルギーは、日本の今後の課題ですよね。
    今は、コープこうべ委託事業で関西にいます。
    コープでんき ようやく4月からはじまりました。
    日本も新しく懐かしい時代がくると
    いいですね。
    イギリスは 同じ島国とは思えないぐらいお洒落ですね。
    でも、日本の四季がすきで
    なかなかうごけませんね。