生:「鶏を鶏舎に一斉に入れて一斉に出すオールインオールアウト方式で、出した後に清掃や消毒を徹底していると聞きますが、鶏によって成長の違いはないんですか?大きくなりすぎたのとかまだ小さいのとかがいて、一斉に出せるのかと疑問に思うのですが」
農:「なるべく均等に育つようにしていますが、ブロイラーで300gくらいの違いはでますかね。でも一斉に出荷しますよ」
生:「たった300gですか?!すごいですね」
生:「鶏が卵を産んだ後はどうなるんですか?」
農:「若鶏とは違った歯ごたえがあるお肉がとれるので食用にもなるんですよ」
生:「へぇ、そうなんですか」
農:「でも若鶏(ブロイラー)と、たまごを産む鶏は実は別の生き物なんです」
生:「えっ?」
農:「肉になる鶏は50日で出荷されますが、その時には3kg。卵を産む鶏は50日だと600グラムぐらい。餌の中身も量も全然違う。たまごを産む鶏は690日ぐらいまで飼育しますが、その時でも2㎏ぐらいです」
生:「そんなに違うんですか」
農:「ブロイラーは“肥育”させますからね。たまごを産む鶏は体も小さいのですが、暑さに弱くて夏は食が細ります。今年は大変でした」
編:知らないことを聞いて話していくことで、話題が広がっていました。オールインオールアウトの時に鶏のサイズが違うかなんて考えたこともなかったです。「知らない」ことは恥ずべきことではなく、「知ることができる」きっかけなんですね。
生:「生き物相手で大変な仕事ですよね」
農:「鶏を入れて1年半はずっと毎日同じことが続きます。鶏は毎日卵を産むので自分の好きなようには休めないですね」
農:「でも自分のやっていることが、成績とかにはっきり出てくる。それがやりがいかな」
農:「生産者によい鶏を育ててもらえるようにすることが、農協職員の私の仕事。ブロイラーの生産者約40人を二人で手分けして担当しています。指導というか…教えてもらうことも多いです。その他、取材受け入れとか産地点検対応とか、生協と生産者をつなぐのも役割です」
農:「生産者から集めた卵を洗って計量してパックづめするGPセンターは、1年で1日しか休みがないんです。1月1日だけ。そして1月2日は2日分のたまごを処理するから、たいへんな仕事量なんです」
生:「卵を産むのに休みはないですよね。鶏にあわせた生活や仕事になるんですね」
生:「ってことは台風とかで出荷できないと大変ですよね」
農:「そうなんです。ハラハラしています。ブロイラーはまだ出荷日が台風にあたっても1日早めたり遅らせたりできますが、卵を産むのは止められませんから」
生:「毎週、休みなく組合員さんの手元に届くことって、すごいことなんですね」
農:「鶏は冷たい風にあたるとお腹をこわして腸炎になるんです。風邪を引くような感じで、特に小さい頃はかかりやすい。ブロイラー農家は雛から育てるのでそこに一番気をつかいます。風を入れないようにカーテンを下ろしたりして調節します。でも空気がよどむといけないので締めっぱなしにはできません。小さい雛の時期や羽が生えかわる時期は裸みたいなものなので特に気をつかいます。大きな音にもビックリするからできるだけ鶏舎に入る回数を減らしたりしています」
農:「温度が上がりすぎたりすると、警報が届くんです。そのままにしておくと鶏が死ぬこともあるので、夜中でも鶏舎に駆けつけます」
農:「ブロイラーは赤ちゃんから育てるので一日一日変わっていくんです。それにあわせて作業も変わるからたいへんなんですよ」
編:アタマで分かっていたことと、直接お話を聞いて実感することには大きな違いがありました。当たり前だと思っていたことの向こう側の事実が見えてきました。
生:「自分から農家を継ごうと思ったのですか」
農:「高校生の頃までまったく継ぐ気はなかったです。でも気づいたら継いでいました。継いでみたらやりがいはありますね。いいことばかりじゃないですけど」
農:「いつもくん(利用登録)のことを今日はじめて知りました。注文数も安定するし、生産側から見ても理想のカタチだと思いました」
農:「50%の登録率ってすごいですよね」
生:「組合員さんの生活に必要なものが毎週届くし、生産者のみなさんにはぶれない数量でお願いできますから。これからも品目を増やすなど強めていきます」
農:「いつも自分たちの商品のどこが受け入れられているのか気になっていたんです。今日は生協の組合員さんが、たまごを鮮度で選んでいるってことを聞けてよかったです。これからも鮮度がいいって言っていただけるよう励もうと思います」
編:それぞれが持っている情報をつなぎ合えば、もっともっといろんなことができそうですね。
どのグループでも率直な質問とそれに対する返答が飛び交っていました。
知らないからこその視点にハッとさせられることもありました。互いのやりとりで気づけたこともたくさんあったようです。
4つのグループを回りながらとびとびにしかお話を聞けなかったので、終了後に各グループの参加者に印象に残ったことをお聞きしました。
■益永浩平さん(コープ九州 エフコープ商品政策課)
マルイのみなさんもいろいろな仕事、生協の中の部署もいろいろ、いろんな仕事の人がいて分からないことばかりだったけど、聞けば真剣に答えてくれて、まじめにフリーに話ができました。いろんなクロスができて今後に仕事のインスピレーションにつながりました。例えば、組合員さんに冷凍食品を紹介するときに、「産直たまごのマルイさんで作っているんですよ」と一言添えるだけで安心感や信頼感が増すんじゃないかとか、できそうなことがいろいろ浮かびました。
■山崎征平さん(エフコープ人事部)
今、採用の仕事をしていますが、エフコープのたまごや鶏肉について、紙の上で学んだ知識でしか伝えられていませんでした。今回、生産者のみなさんのお話を直接お聞きできたので、自信を持って伝えていけます。一番印象に残ったのは、卵のチェックを目で5回、機械で一回しているということでした。一つ一つにそこまで手をかけているのだと感じました。配達の担当をしていたときに組合員さんから「たまごはどこも同じでしょ」と言われたことがあったのですが、今ならしっかり答えられます。マルイ農協さんの見学にいってみたいです。
■井上嘉博さん(コープ九州 商品政策部)
一番感じたのは生産者のみなさんの鶏に対する気のつかい方です。想像以上でした。寒い風が入らないようにカーテンで調節をしたり、春夏秋冬、季節によって世話の仕方を変えたり、警報がなったら夜中でも駆けつけたり。鳥インフルエンザが発生すると鶏を処分することになり、風評被害で立ち行かなくなくこともあるで、そうならないように衛生管理をがんばっていることなど直接お話を聞いて、大変さをひしひしと感じました。
■伊藤泰尭さん(コープ九州 供給企画部)
一番印象に残っているのは、南国元気鶏として育て始めた鶏でも、鶏舎内で治療鶏が出た場合は鶏舎単位で治療するため、他のすべての鶏も南国元気鶏として出荷できないということです。南国元気鶏は抗生物質を使わずに育てることになっているので、治療鶏を出さないよう日々の生産管理には非常に苦労されていることを感じました。
「産直は大事な活動」だとは思っていましたが、配達している時もコープ九州に出向してきてからも、毎週カタログに載って毎週届くことを当たり前にとらえていました。今回お話をして、当たり前の後ろで大変な努力がされていることを強く感じました。
農業における後継者不足が課題となる中、マルイ農協と生協にこれだけの若者がいて、今回話し合う機会が持てたことをとても頼もしく思いました。これを機会に生産の現場や商品配達の現場を直接見て、お互いの理解を深めながら、新たな発想で次の一歩を踏み出してほしいです。
(WEBLABO編集部)