人と人とのつながりから生まれる力

~日本生協連炭谷さんに聞く、生協のこれから~

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日本生活協同組合連合会(略称:日本生協連)の本田英一会長のインタビューでは「生協でないとできないこと」という言葉が出てきました。

現在、日本の生協の2030年ビジョンの検討が行われています。「くらし・社会・生協の未来を考えよう」をテーマに、全国の生協の組合員や職員によるワークショップをかさね、2019年1月に素案が報告されました。今回は、2030年ビジョン検討委員会の事務局を務めている日本生協連の炭谷昇さんに、これまでのお仕事やビジョンの検討過程で感じている「生協のこれから」について、コミュニケーションやIT活用の視点を中心にお聞きしました。


炭谷 昇 さん

2001年にコープとうきょう(現コープみらい)に就職、配達や組合員拡大(仲間づくり)に従事。2003年から日本生協連で物流、営業、商品開発、仕様・表示管理、マーケティング、組合員の声、(株)コープクリーン出向などを経て、2018年度より、政策企画室。

 

 

◎どうして生協に入ろうと思ったのですか?

長く働ける職場で、良心が痛まず、かつ働いている実感が持てる仕事がいいなと思っていました。自分には抽象的な仕事はあまり向いていないと思っていたので、暮らしに身近であるところも生協が就職先候補になった理由です。

 

 

◎いろんな分野のお仕事を経験されていますね。コミュニケーションに関連して、印象に残っているお仕事がありますか?

商品政策部にいたときに、CO・OP商品の特徴を伝える、商品情報シート作成に取り組みました。ふだん使いの商品は、全国の生協で共同開発することで、より美味しくてお求めやすい商品を作ることをめざしています。それ自体は大切なことなのですが、合意形成しながら商品開発していく中で、商品のコンセプトを突き詰めることが弱まってきていることも感じました。商品情報シートに載せるその商品のコンセプト、つまり「組合員のどんな想いをカタチにしたのか」を一言で表すことが難しかったのです。書くのがしんどいから商品情報シートから「こんな声に応えました」の欄をなくしてしまおうという話が出たこともありましたが、これは生協の肝なので外しませんでした。作り手が思ってもみなかった使われ方や価値を、組合員の声から発見することもありましたよ。

 

 

◎例えばどんなことがありましたか?

「わいわいスティックゼリー」「るんるんスティックゼリー」という商品があります。子どもが持ちやすくて食べやすいことが特長だと考えていたのですが、組合員は「色がきれいだけど、袋に着色しているだけで、ゼリーには着色していないから安心」と言っていると、ある生協の職員さんから教えられました。

その頃、組合員の声の仕事もやっていまして、組合員が暮らしの中で発見して受け入れていった価値と商品担当のこれが便利だろう美味しいだろうと想定した価値が、全くずれていることをいくつか目にしました。商品情報シートに載せるコンセプトも、発売時と実際の受け止められ方、使われ方がずれていたら、それに合わせて変えていっても良いと思うことが多かったです。

 

 

◎生協では「声を聴く、声に応える」とよく言いますが、単純なことではないのですね。

声を聴くとは、真意を聴くということだと思います。組合員が「困っている」という事実は受け止めつつも、その組合員が要望している解決策がベストだとは限らない。言われた通りに対応するのではなく、「あなたの願いはこういうことですよね」と真意をくみとって解決策が示せるのがプロだと思います。

組合員の声担当のときは、真意を聴いて、商品を磨き続ける「声の循環」の仕組みづくりを模索していました。宅配や店舗の担当者が聴いた組合員の声を、商品担当が読む。それをメーカーや生産者とも共有して、一緒に「じゃあ、もっとこうしようよ」となるように、声のどんどん巡っていったらいいですね。

一つの例ですが、CO・OP商品に「声をおきかせください」と二次元コードを入れました。こんなことで声が寄せられるのかな?という思いもありましたが、多くはないけれど意外と届くんです。子どもから「めっちゃうまい」とか。コミュニケーションの接点、入り口をつくると何かしら変化が起こるし、やってみてはじめて「確かにそうだね」とわかることがあります。

 

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◎中国のIT活用について視察にも行かれたとお聞きしました。

中国はキャッシュレスが進んでいて、ネット通販、出前アプリ、カーシェアリング等、ありとあらゆることがスマートフォンをプラットフォームにして行われているというのを聞いて視察に行きました。私たちの事業は、紙のカタログから始まっていてそれをどう改善しようかと考えていますが、彼らはネット通販からスタートしているので土台や発想が違います。また、最先端のITを活用しながらも、同時に、結構、アナログに人海戦術でやっているところもありました。まだ自分の中でもやもやしていてカタチになっていないのですが、ITと人との組み合わせ方の生協なりのやり方が作れないかなと思っています。

 

 

◎生協らしいIT活用ですか。どんなことが考えられるでしょうか?

いま人生100年時代と言われ始めていますが、単線的で画一的なライフスタイルではなくなっていますし、地域のあり様や課題も地域ごとに違います。これからの時代は、個々をきちんと見ることが今まで以上に大事になります。全体で大きな方向性を共有しながらも、組合員に一番近いところが自律分散で動ける方がいいと思います。そのためにも、組合員との接点を大切にしながら、裏側の仕組みはもっとITで効率化したり、現場をサポートできればと思います。

生協のいいところは、各生協が試行錯誤しながら、教え合って学び合ってバージョンアップしていくところです。連帯できることはもっとあるはずなので、生協の強みである共通の想いを基礎に、小さな試行錯誤を重ねていけるといいですね。

もうひとつ気になっていることは、ITを活用すれば、自動的にコミュニケーションが活性化するわけではなく、ITは手段に過ぎないということです。生協は人と人のつながりで、願いを実現してきました。生協にとってコミュニケーションはこれからもこの先も重要なことです。ただ、コミュニケーションのとらえ方が変わってきているのではないかと考えています。物心ついたときからスマホがある世代にとってのコミュニケーションとは何か?自分たちの世代とは違っているはずです。近所の人と分け合う共同購入を見たことがない「個配ネイティブ世代」に、生協の根っこの価値をどう伝えたらよいのか。「つながり」「たすけあい」の感覚も違うはずで、「心地よい・安心」と感じるのか、「うざったい・縛られる」と感じるのか。例えば、「産地との交流」といった言葉もそれぞれで受けるイメージが違ってきていると思います。

なので、単にITを活用すれば解決するのではなくて、コミュニケーションの「場のデザイン」が重要だと思います。

 

 

◎2030年ビジョンづくりではどんなことを行っているのですか?また検討の中でコミュニケーションに関連して感じることを教えてください。

全国でワークショップを12回行い、54生協、488名が参加しました。プロのファシリテーターに入ってもらって、自由な発想でわいわいと話し合いました。九州の組合員からは、「援農婚活」「COOPビレッジ」など、いろんなアイデアが出てきました。

ワークショップの過程で、希望と危機感の両方を感じています。生協には、組合員にも職員にも、よりよい社会を創りたい、人の役に立ちたいという純粋な想いが共通にあります。これは強みであり希望だと思います。しかし、自分の反省でもありますが、職員は、現在の延長からなかなか脱却できない。組合員は、生協への想いが強い反面、内向きになりがちな面もある、ということも感じました。まずは一回殻をやぶらないと面白いものは出てこないので、「外部・他者の目線」を意識することが必要だと感じています。

生協以外の人たちとの連携も含め、「人と人とのつながりから生まれる力」が、生協の核となる力と感じています。

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