「道中はゴヤンゴヤン(ゆらゆら)するよ!」という現地スタッフの忠告をうけ、覚悟を決めて車に乗り込んだ一行。私たちが向かったのは、これから日本生協連が支援する農園の“先輩農園”です。ほとんどアトラクションのような車の揺れになんとか耐え、約1,5時間郊外へ走ると、アブラヤシの生い茂る農園に到着。ここ、シンタン県にある『リンバハラパン』生産組合では、2020年までに組合が管理する約半分の土地で持続可能なパーム油の出荷を目指しています。訪問した農園では、RSPO認証(※)を取得するための最終段階を迎えていました。想像以上に背の高いアブラヤシ農園は、「美しい」という印象です。
※ 認証システム「RSPO」とは?
欧米企業は認証油100%への切り替えを、大手パーム油生産者は森林破壊ゼロのコミットメントをそれぞれ公開しています。日本でも2017年頃からようやく加盟企業が増え始め、現在120社以上がRSPOに加盟。
> RSPOを詳しく知りたい方はWWFのサイトへ
リンバハラパン生産組合には、現在160世帯が加入しています。生産者が出資金を出し合い、およそ361,37ヘクタールの土地を管理しています。組合で管理する農園のうち4ヶ所で、オーガニック肥料と化学肥料の比率を変えて試験栽培(デモプロット)を行い、各プロットの生産量の違いを観察しています。肥料だけでなく、質の良い苗を選ぶことや苗の植え方、土地の利用方法など、さまざまな技術と知識をWWFの支援のもとで実践してきたそう。認証を目指して4年目の現在、「どんどん生産量が上がっているのをみんなが実感している」といいます。訪問した農園では、1ヘクタールあたり2トン(月)(平均)の生産量に達しているとのこと。それでも、認証水準に近づくのに4年という時間がかかっているのは、パーム油を取り巻く複雑な課題が関係していました。
西カリマンタン州の「小規模農家」の特徴として、農園運営や持続可能性に関する知識の不足や、規制の統制が図られていないこと、土地権利の取得問題や行政との連携不足など、さまざまな課題が入り組んでいます。農園へ向かうまでの道路が整備されていないこともまた、行政の支援が行き渡っていない実態のあらわれでした。
そうした状況下で、RSPO認証を受けるための「保護価値の高い森林」の保全を目指すためには、その森にどれくらい植物や生物が生息しているか、先住民が森を生活の場として利用している場合はその権利をどう尊重するかなど、専門的な知識が必要です。支援の中では、専門知識を農家が理解できる内容と速度で現場に落としていくことも求められます。その対応策として、WWFジャパンの伊藤さんが「人をつなぐことも私たちの役割です」とおっしゃるように、時間をかけて森林を調査(アセスメント)し、農家さんのわかる言葉で説明できる専門調査員(アセッサー)と農家さんとつなぐという取り組みも行われています。
この訪問で、私が「健全な進め方だなあ」と関心を持ったことの一つが、WWFの支援のもと、組合員の中でリーダーを育て、そのリーダーがトレーナーとなり、現場の指導者となるような仕組みづくり(ICS:Internal Control System)を実践しているとのお話です。支援に頼らず、それぞれの農家が自立できる生産体制を構築することも、持続可能なパーム油生産のためには不可欠。リンバハラパンのように組合組織を発足させ、協同運営の仕組みを作ることは、安定した生産と自立のための重要な鍵になると感じました。
(取材/文 WEBLABO編集部 曽我由香里、写真 西山勲)