#03 農家、政府、ドナー、消費者、専門家、NGO

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 今回の視察でとても貴重な経験となったのが、支援先であるメラウィ県の行政、WWF、専門家間のパーム油生産における意見交換会の場に参加したことでした。持続可能なパーム油生産のためには、多方面の協力体制が欠かせません。シンタン県での実績を参考に、お隣のメラウィ県でもさらに普及を進めようとしているなかで、今回の場が設けられました。「複雑に入り組む課題に、(西カリマンタン州内の)2県で一体的に取り組み、サスティナブルに開発を進めたい」という県職員の挨拶にはじまり、大学教授からの専門的な見解や、WWFの支援状況、パーム油を取り巻く問題についてのプレゼンテーションが行われます。メラウィ県内では、開発可能な土地の約、農園をスタートできる体制が整っていないという根本的な課題から、肥料を購入するための経済的支援が必要であることや農家の知識不足など、細部の課題まで、さまざまな問題が議論されました。

 ここメラウィ県では、そもそも小規模農家の実態を把握するためのデータ不足が、プロジェクトを足踏みさせる課題の一つとなっています。現在、データベース化のために、農園選定やフィールド調査、GPS画像などを元に小規模農家をマッピングし、基礎固めをする段階にきています。その情報を元に、持続可能なパーム油の政策とプログラムを組み立てる計画が進められています。長い道のりですが、環境面、社会面、経済面の多方面から取り組まなければ、持続可能な生産は実現しません。RSPO認証システムは、そうした取り組みを象徴化するためのわかりやすい認証システムとしての機能も果たしているのだと実感しました。

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会場の様子。さまざまな立場の方が参加されていました。
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県職員の方からは、今回日本からの視察チームが参加していることがアナウンスされ、感謝の言葉も。
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積極的に質問が飛び交う会場からは、関心の高さを感じます。
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会場に向かう途中で飛び込んできた風景です。農園開発に野焼きや焼畑の手法を用いると、森林火災や泥炭火災で大量のCO2放出を引き起こし、環境への悪影響が懸念されます。RSPO認証に際しては火の使用は一切禁止されています。

ライセンスを受けた「苗」が鍵を握る

 視察の最後に訪れたのは、メラウィ県の支援候補のひとつとなる農園です。ここは数年前に仲間と樹木がまばらに生えた林を切り開いた農園で、生産性が低く、持続可能な生産方法についてもあまり知識を持っていません。WWFからのサポートが得られれば仲間と組合を立ち上げるということで、訪れた日は、ご近所の仲間とそのご家族が温かく迎えてくださいました。

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開拓途上であることが実感できる未舗装の道路を奥地に進む。わかりにくい場所にある農園まで農家のお一人がバイクで先導してくれました。
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農園のオーナーである彼が、土地の状況や生産状況、問題となっていることなどを詳しく説明してくださいました。

 農園に入るとすぐに、先輩農園を運営する『リンバハラパン』生産組合でみた景色とはあきらかに様子の違うことに気づきます。リンバハラパンで感じた美しさとは異なり、切り落とされた葉や枝木が放置された足元やアブラヤシが生える間隔の狭さなど、雑然とした印象です。話を伺うと、アブラヤシの「苗」そのものにも問題があるとのこと。政府がライセンスを与えたパーム油研究所からの苗だとだまされて購入した結果、果実にカビが生える病気が入ってしまったというお話でした。生産性を高め、収入を安定させることで、不要な森林破壊を防ぐことができます。そのためには、政府がライセンスを発行したパーム油研究所からの「苗」を購入することが、結果、良質で生産性の高い農園運営につながります。そうした知識と技術、ネットワークを農家の方々へ普及させることが、急務であることがわかってきました。

 それにしても会う方会う方、本当にうれしそうに私たちを歓迎してくださったのが印象に残ります。貧困や教育などの問題から、「暗く苦しい暮らし」という勝手なイメージを描いていましたが、笑顔が多く仲睦まじい暮らしは、逆にうらやましいとすら感じるほどです。彼らと接し、消費国に暮らす者と生産国の方と、対等の立場でこの問題を共有し、自分ごととして向き合いたいとあらためて感じました。

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枯れ枝葉が乱雑に放置されています。日当たりにばらつきがでたり、養分が行き渡らず生育を阻んだりする可能性があります。
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病気が入った果肉。白い部分がカビです。艶や張りがなく、生育状態も良くない印象です。
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訪問を家族総出で歓迎してくださったみなさまとWWFチーム。
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西カリマンタン州内2県での視察を終え、州都ポンティアナックへ移動する飛行機から見た森林。不自然に直線で区切られた広大な農地が見えます。企業などが大規模に開発するプランテーションは、ある種“村まるごと農園”のような状態で管理されているそう。森林破壊の課題が隣り合わせであることを感じた瞬間でした。

意思を、表示し続ける。

 帰国前、WWFボンティアナックオフィスで、視察の振り返りと質疑の時間が設けられました。私はこの時点でも、入り組んだ課題と認証システムの複雑さに、理解が追いついていないというのが正直な感想でした。それをぶつけてみると、WWFスタッフでも、理解が追いつかないことがあるといいます。小規模農家の把握や森林開発と破壊の実状、頻繁に変わるインドネシアの法律など、現地スタッフですら、説明が追いつかないこともあるとのこと。日本からの視察チームも、現地を訪問して感じたことや気持ちをあらたにしたことなどを共有しあいました。

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WWFジャパンの伊藤さん。現地通訳とパーム油をめぐる問題や支援の状況についてきめ細やかなサポートをしてくださいました。
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コープ東北の磯さん。現地で感じたこと学んだことに責任を持って、カタログやWEBを通じて組合員に伝えたいと話していました。
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WWFポンティアナックのオフィス前で

 2018した1年目の本プロジェクトでは、どのような形で支援できるかを引き続きWWFと共に、検討していきます。入り組んだ課題を解決するために、パーム油を使った商品を提供する企業が主体的に取り組むことはもちろんですし、消費者一人ひとりが、今できることとはなにかを考え、小さくても行動をはじめることでしか変革は生まれません。
 振り返ると、今回訪れた農園で「わざわざ来てくれてありがとう」と感謝の言葉をくれた生産者の笑顔が心に浮かびます。現地を訪問することは、消費者の関心が高まっていることを生産者へ意識付け、持続可能なパーム油を作ろうというモチベーション維持にもつながるというのは、発見でした。もちろん、現地に行かずともできることはたくさんあります。企業であれば、まずはRSPO認証油を使うと宣言することや、消費者に情報を届ける努力をし続けるということも手段ですし、消費者自身が認証油を使った商品を買う選択をすることが、消費国からの意思表示となります。 

消費国に住む一人として、何ができるのか? をこれからも考え続けたいと思います。

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(取材/文 WEBLABO編集部 曽我由香里、写真 西山勲)

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