コープ職員ルポ

インドネシア ボルネオ島パーム農園訪問記

 

 みなさんは「パーム油」と聞いて何を思い浮かべますか? 「植物油だから安心」という声が聞こえてくる一方で、森林破壊・環境負荷への問題視など、ネガティブなイメージをもたれる方もいるのではないでしょうか? 正直、私も現地に行くまでは、そうしたネガティブな印象がありましたが、現地でWWFスタッフから詳細な説明を受け、取り組みに目を向けると、パーム油自体はむしろ、現代の需要を解決するための最良の油であることが見えてきました。
 今回ご紹介するのは、2018年5月に始まった日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)とWWFジャパンの共同プロジェクトとして実施したパーム農園の視察のようすです。インドネシアボルネオ島西カリマンタン州を訪問した5日間をレポートします。

 

 

持続可能なパーム油のためにできること。#01

rupo_edamame_01_04

 

▼ WWFインドネシアのパーム油プロジェクトマネージャーのアグンさんからのメッセージ動画はこちら

 

世界一の生産量を誇るパーム油

 パーム油とは、アブラヤシの果肉と種子から抽出される油脂です。その汎用性の高さと、1ヘクタールあたりの生産量が、菜種や大豆と比べても高く、生産効率のよい植物油脂として、世界で最も多く生産されています。用途は幅広く、即席めん、パン、クッキー、チョコレート……スーパーに入ると、50%を超える商品に使われていると言われるほど身近なオイルです。しかし、日本ではそのことをあまり意識して手に取る人は少ないのではないでしょうか。その理由は、パーム油そのものを手に取る機会が少ないこともありますが、日本の食品表示法の内閣府令では「植物油脂」か「動物油脂」かの記載で良いと定められていて、具体的に“何の油”が使われているかが、消費者に情報として届きにくいという現状があります。そうした“知る機会”が少ないことは、消費国日本の課題のひとつです。

rupo_edamame_01_02
生産量の85%をインドネシアやマレーシアの農園が占め、世界中に輸出されているパーム油。現地のコンビニやスーパーでは調理油としても、見かけるポピュラーなオイルです。

持続可能なパーム油の生産を支援する

 コープの洗剤にも使われているパーム油ですが、日本の生協では2007年から、「持続可能なパーム油の生産を支援する」取り組みを進めてきました。また『ボルネオ緑の回廊』 プロジェクトや地域の環境団体への寄付をし、2018年からはWWFジャパンがインドネシア領ボルネオ島で進めるプロジェクトへの支援がスタート。西カリマンタン州の保護価値の高い森林に近いエリアの小規模パーム農園の持続可能な生産などを応援しています。

> コープの洗剤を詳しく知りたい方はこちら

 視察の目的は3つありました。ひとつは、支援候補となる小規模農園を訪問し実態を把握すること、二つ目に、今後支援農園と目指す“ありたい姿”をイメージするために、持続可能な生産を推進する認証取得を目指し取り組みを進めているいわば“先輩農園”のみなさんとお話をすること。そして、三つ目は農園をサポートするWWFジャパンとWWFインドネシア、そして生協のスタッフがコミュニケーションを図り、継続した支援を推進するためです。

 日本から約12時間、2回飛行機を乗り継いでようやく到着したシンタン県で、まずはWWFスタッフから、取り組みについて説明をしていただきました。

rupo_edamame_01_01
WWFインドネシアのシンタン事務局。

パーム油は世界最良のオイル

 支援のパートナーであるWWFは、人と自然が調和して生きられる未来を目指して、100カ国以上で活動する地球環境保全団体です。(詳しくはWWFの公式サイトへ)WWFインドネシアとWWFジャパンのスタッフが連携しながら、パーム油の原料であるアブラヤシが、環境保全と人権の観点から、持続可能な手法、環境の元で栽培されるためのサポートをおこなっています。

 「パーム油は世界最良のオイル」。パーム油プロジェクトマネージャーのアグンさんからの最初のお話は、パーム油自体に問題があるのではないという認識の共有でした。「アブラヤシは農産物で、そのものに問題はない。問題は、生産方法、環境、人権の問題であり、とても入り組んでいるんです」

 最も効率よく栽培ができ、かつ汎用性の高いオイルとして、パーム油の需要は世界中で高まっています。もし、環境保全や人権の問題を理由に、パーム油の栽培をやめてしまったらどうなるでしょう? 仮に他の植物油を選択したとしても、需要に対する供給を補う手段として、あらたに森林を切り開いて農園を作ったり、無理のある労働が強いられたり、どこかに歪みが生まれてくるのは目に見えています。植物油脂の需要が高まっている以上、パーム油を使わないという選択ではなく、パーム油を持続可能な生産方法で供給できる環境を整備することこそが、解決の糸口になるというお話に、それまで抱いていたパーム油に対するネガティブなイメージは、一変しました。

rupo_edamame_01_02
WWFインドネシアのパーム油プロジェクトマネージャーのアグンさん。WWFがどのような考え方でプロジェクトに取り組んでいるかについて、お話いただきました。
rupo_edamame_01_02
WWFジャパンの川江さん。プロジェクトマネジメントを担当され、現地に足を運んで技術的アドバイスや計画、進行などを担当されています。
rupo_edamame_01_02
WWFインドネシアのフィールド担当のムナウィルさん。シンタン県とメラウィ県の現場で、農家の方々と一緒にプロジェクトを進行されています。
rupo_edamame_01_02
森林開発の問題を解決することが、貴重な森を守ること。(資料提供:WWFジャパン)
rupo_edamame_01_02
今回、日本から4名の生協職員が視察に参加しました。写真は真剣な眼差しで話を聞く日本生協連の本木さん。

 

(取材/文 WEBLABO編集部 曽我由香里、写真 西山勲)

この記事はいかがでしたか?ご感想・コメントをお願いします。
※こちらはご覧いただきました記事に関するご感想をお聞かせいただくことを目的としております。商品等個別のお問い合わせにつきましては、正確に調査・回答させていただくために、こちらのフォームをご利用ください。

皆様から寄せられたコメント