コープ職員ルポ

大分臼杵訪問記

コープ九州:石井梨香

臼杵市は、大分県の東南部に位置する人口は約4万人のまち。東は豊後水道に面し、ふぐ料理や石仏でその名を知られています。そして醬油やみそなど、醸造業が盛んなまちでもあります。その臼杵に、コープの醬油やみそを製造しているフンドーキン醬油株式会社があります。醸造のまちに根ざしたフンドーキンの歴史と今を訪ねました。

その2=熱いやりとりで重ねてきた生協とのつながり。

厳しい時代を乗り越え「品質第一」

江戸時代に創業し、150年を越える歴史があるフンドーキン醬油ですが、その歩みは順風満帆ではありませんでした。第二次世界大戦時には国の統制で原料が手に入りにくくなり、多くの醬油屋さんが店をたたみました。戦争が終わって、原料を手に入れて作れば売れる時代になったものの、その当時水害や火事にみまわれお金がなくてよい原料が買えないことに。その結果、品質のよい製品が作れず、評判を落としてしまいました。地元から離れたところから地道に営業を重ね、どうにかお金が回りだしたのは昭和30年代後半だったそう。小手川社長にモットーをお聞きすると、即座に「なにをおいても品質第一」という言葉が返ってきました。一度ついてしまった良くない評判を払拭するのにはたいへんな努力が必要。そのことを教訓として、今につないでいることが伝わってきました。

臼杵川の中洲にあるフンドーキン醬油株式会社の本社とみそ工場
臼杵川の中洲にあるフンドーキン醬油株式会社の本社とみそ工場
臼杵の造船会社の社長住居と学校の講堂を移築した本社社屋。古いものを残して活かす姿勢が感じられます。
臼杵の造船会社の社長住居と学校の講堂を移築した本社社屋。古いものを残して活かす姿勢が感じられます。
本社2階に上がる階段や窓枠も当時の様式のまま。2階は会議室として使われています。社長曰く「冷房はありませんが、風が通るのでそんなに苦痛ではないのですよ」。
本社2階に上がる階段や窓枠も当時の様式のまま。2階は会議室として使われています。社長曰く「冷房はありませんが、風が通るのでそんなに苦痛ではないのですよ」。
各部屋の窓ガラスは厚さが均等ではない古い板ガラス。割れると代わりが無いため大事に使われています。
各部屋の窓ガラスは厚さが均等ではない古い板ガラス。割れると代わりが無いため大事に使われています。

助け合いと負けん気と

昭和27年、現コープおおいたの前身である臼杵生協が設立されました。が、その1年半後、大きな赤字を出し危機に直面しました。その時、助け舟を出してくれたのがフンドーキン醬油の当時の社長小手川金次郎さん。金次郎社長はみずから債権放棄を宣言し、他の債権者たちを説得してまわられたそうです。当時はフンドーキン醬油も経営が厳しく、銀行とのつながりを保つために毎朝の支店長の自宅への挨拶を欠かさなかったとエピソードも残っている金次郎社長。気配りと男気をあわせ持った方がいたからこそ、生協の火が消えずにすんだのです。

その後も、大分の生協との商品取り引きが続き、生協の組合員とのやりとりで商品開発も行われました。当時のみそは袋入りで、発酵が進むと袋がふくらむので保存料としてソルビン酸という食品添加物を入れるのが一般的でした。「保存料を使わない味噌を作って!」という大分の生協組合員さんからの熱心な思いを受け止めて日本で最初にソルビン酸の代わりにアルコールを使った味噌をつくることができました。醬油も安息香酸という保存料ではなくアルコールを使って開発しました。どちらも最初は「なんて無茶な要求だ」と思っていたそうですが、熱意にほだされ「やってやる!」という気持ちでとり組んだとのこと。また、お酒を作ってきた経験があったからこそできた技術開発でした。

昭和40年代半ば、九州の各県の生協がそれぞれもっていたコープブランドの醬油やみそを一本化しようとする動きが出てきました。結果、フンドーキン醬油の商品が日本生協連の九州支所のコープ商品として採用されました。この第1号商品が「コープ本醸造こいくち」です。生協の組合員からの要望で、調味料を使わずに小麦・大豆・食塩・酒精(アルコール)だけで作ったしょうゆでした。

こいくちしょうゆの写真(1984年のカタログ「えふ」)
こいくちしょうゆの写真(1984年のカタログ「えふ」)

保存料も調味料も使わずにつくられた「コープ本醸造こいくち」でしたが、甘いしょうゆを好む福岡の生協組合員から「塩かどを感じる。もっと甘いしょうゆが欲しい」との声が出され「コープこいくちマイルド」が1986年に開発されました。その3年後、南九州の組合員からの声に応えて「コープうまくちしょうゆ」が誕生。それ以降も生協組合員の嗜好や生活スタイルの変化に応じ、組合員の声を聴きながら、「白だし」や「ドレッシング」など多くの商品が生まれ続けています。その原動力はフンドーキン醬油と生協の深いつながりなのだろうと思いました。

生協とのつながりをお話ししてくれた社長の小手川強二さん
生協とのつながりをお話ししてくれた社長の小手川強二さん

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