コープ職員ルポ

阿蘇ものがたり産地訪問記

コープ九州:石井梨香

「阿蘇ものがたり」。これは、エフコープとコープくまもとで取り扱っているお米の名前です。その名のとおり阿蘇で育った特別栽培米。2015年9月24日~25日、エフコープの職員研修で産地にうかがい、「とくべつ」の理由を、見て、聞いてきました。

除草剤1回。味でも負けん「阿蘇ものがたり」のひみつ。

湧水の地が育む特別なお米

「阿蘇ものがたり」の産地、阿蘇市一の宮町は阿蘇山のカルデラ内の東北に位置しています。この一帯にはいたるところにに湧水が見られ、古くから生活用水や農業用水に活かされてきました。

また一の宮には、肥後国一の宮である阿蘇神社があります。阿蘇の開拓祖、健磐龍命(たけいわたつのみこと)をはじめ十二神をまつる由緒ある神社で、創建は紀元前(孝霊天皇9年)とされています。

阿蘇神社の楼門。二層の屋根が特徴で、日本三大楼門のひとつです。
一の宮を訪ねた9月25日は秋の実りに感謝する田実祭(たのみさい)の日。参道では奉納の流鏑馬(やぶさめ)が行われていました。
阿蘇神社そばの門前町商店街。通りの両側に水基(みずき)と呼ばれる湧き水が何ヵ所も。
水基のひとつ。水基にはそれぞれ名前がついていて、こちらは竹沢(ちくたく)の雫。実はこの隣には時計屋さんがあるのです。チクタク♪

生産者の技と努力が詰まっています

歴史と水に恵まれたこの一の宮はエフコープとコープくまもとで購入できる特別栽培米「阿蘇ものがたり」産地です。この特別なお米の生産に励むJA阿蘇一の宮表示米部会のメンバーは56名。
特別栽培米とは、化学合成農薬および化学肥料の窒素成分を慣行(その地方の一般的な栽培)の5割以上削減したものをいいます。
通常の稲作の場合、まず種子消毒を行い、苗の時期、田植えの時、育つ過程で病気や害虫を防ぐためや田んぼの雑草をはやさなくするために農薬を使います。そんな中、「阿蘇ものがたり」に使うのは、除草剤を1回だけ(節減対象農薬8割減)。

「除草剤を1回だけというのは生産者にとって、とてもたいへんなことなんです。でもこれを破れば『阿蘇ものがたり』とは名乗れません。この厳しさもあって当初200人を超えていた部会員は今56名です」と表示部会役員の井手さん。今年は、その一度限りの除草剤が効かず、田んぼの草をとるのが相当な苦労だったそうです。「ちょっとでも他の農薬をつかったら、『阿蘇ものがたり』では出せません。阿蘇一の宮のコシヒカリになります。一の宮のコシヒカリも味がいいと評判なんですよ。でも我々は『阿蘇ものがたり』を生協のみなさんに届けようとなんとか食いしばってやっとるんです」

今年は天候の影響で作柄が厳しいとのこと。「熊本県の作況指数は97ですが、もっと下がるかもしれんと思います。50年百姓をしていますが、今年が一番悪い。量が悪いときはたいがい等級も悪い。梅雨が長かったのが痛手でした。そのあとに猛暑となり、穂が出る時期に持ち直したと思ったんですが、イモチ病が出ました。一所懸命、おいしいお米を届けたいとやっていますが、気象には勝てんです。」

もっと知ってほしい「阿蘇ものがたり」

阿蘇一の宮表示米部会と生協とのつながりは20年を超えました。始めた頃は、こんなに長く続くとは思っていなかったそうです。「自分たちは『阿蘇ものがたり』にこだわって生協にずっと出しつづけてきた。この20年ずっと扱いつづけてくれたことにとても感謝しています。だからこそ、生協の組合員や職員さんには、この産地や米のことをもっと知ってほしい。一の宮の『阿蘇ものがたり』にもっと触れてほしいと思うんです。」

生協職員との稲刈り交流に備え、刈りやすいように整えていただいた田んぼ。
鎌を使っての稲刈り。一株と悪戦苦闘しているうちに、部会員のみなさんはすいすい進んでいきます。
若い地区担当がコンバインでの稲刈りを体験させてもらいました。
田んぼを歩くと、バッタやカエルがぴょんぴょん出てきました。
稲刈りの終わった田んぼ。向こうに見えるギザギサの山は、根子岳。

「阿蘇ものがたり」を育てている部会のみなさんは、米だけでなく、トマトやアスパラなどの野菜を作っていたり、肉牛を飼っていたりします。 今、米づくりだけでは暮らしていけません。牛を飼っているので、その糞尿を堆肥にして入れる場所としても田んぼが大事。また田んぼの稲はサイレージにして牛の餌にしています。牛を売った収入や野菜の収入があるからやっていけるのだそうです。 「米だけではやっていけないが、田んぼは代々受け継いだもの。味はどこにも負けん気持ちでつくっています。」部会のみなさん、全員の思いです。

こんな特別なお米「阿蘇ものがたり」、一度は食べてみてください。

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