久門智弘 来歴
1988年エフコープに入協。宗像支所に着任後、若木台・日の里・福間エリアなど担当、配達業務を行う。
主任業務を経て2002年エフコープの商品部(当時のくらし企画部)へ異動。2005年コープ九州に出向しカタログ編集室(当時)にてカタログ協同化と「よかったね要望企画」のエフコープ→九州統一企画業務を行う。2013年に事業企画部にてWeb企画とeフレンズ推進を行う。(2016年には離島エリアのeフレンズ推進のため、八重山諸島6島を約4日間で駆け回る)、2020年からはギフト媒体を担当し商品調達・企画・カタログ制作に携わっています。
六花亭との商談
組合員の生の声(よかったの声)は時には難しい商談も実現させてくれます。
そのひとつが北海道の有名菓子メーカー「六花亭」との商談でした。
当時、福岡の百貨店で北海道催事が開催されるたび、「エフコープでも六花亭のマルセイバターサンドを取り扱ってほしい」という要望が複数寄せられてきました。先輩バイヤーや取引先担当者にいろいろと聞きましたが、「六花亭は取り扱えないよ」「帳合ベンター経由※ではやらないから」と企画にはハードルの高いメーカーでした。
当時の全国の生協では唯一ちばコープのみ取引を行っていました。
※帳合ベンダー…小売業者が商品を仕入れる際に、特定の卸売業者や問屋を介して取引を行う場合、その卸売業者や問屋を指す言葉
「よかったね要望企画」の推進のため、ちばコープの「声に応えて」チラシの担当をしていたバイヤーと仲良くなり、「エフコープでも六花亭の商品を企画したい」と話をすると、「とりあえず商談のアポはとってみようか?かなり難しいメーカーではあるけど…。あとはひさちゃんの熱意やね」ということで商談アポを取ってもらいました。先輩バイヤーからは「名刺交換さえしてもらえないかもよ」とか「話聞いてもらえるかなぁ」とか言われましたが、六花亭の商品を企画してほしいという組合員の声を20枚くらい携えて福岡から飛行機で2時間半、札幌から特急で2時間半、合計約5時間かけて帯広の六花亭本店に商談に向かいました。
特急の車内では「こういうことを伝えよう。こう言われたらこう返そう」など頭の中でシミュレーションを繰り返し、緊張のあまりモノも喉を通らない状態で六花亭の本店に行ったことは今も覚えています。
六花亭の担当者からは、基本として小売様とは新規の取引はすすめておらず、ご依頼に応えることは難しい。仮に取引を行う場合もベンターを間に介さない直取引になる等の話をされました。
さらに「福岡では複数の百貨店と取引があるのでそちらで買ってもらってはどうですか」と言われました。
私は「ここにたくさんの御社の商品取り扱いの要望の声が寄せられています。中を見てもらったらわかりますが、仕事を終えて夕方百貨店に駆け付けたが、既に六花亭の1日の販売数は完売していて買えなかったと言った生の声も寄せられています。そういう組合員さんのためにも、1個でも確実にお届けして喜んでもらいたいという思いからお願いに来ているのです。生協の売り上げどうこうは二の次です。今日、この要望の声を置いていきますのでぜひご一読ください」と伝えました。
片道約5時間かけて、わずか20分程度の商談でした。
伝えたいこと、シミュレーションした内容は全ては伝えられませんでしたが、組合員の声を20枚くらい渡してこれたことは後々の商談の進展に大きく影響したと感じています。
六花亭本店での商談を終え、帯広駅まで歩き、ホッとして駅前のお店で食べた豚丼はおいしかった!
その後、書くと長くなるため割愛しますが、3回ほど福岡⇔帯広の行き来を繰り返し、六花亭との取引開始となりました。
当初は「常温商品で、1年に2、3回、北海道での繁忙期以外での取り扱い」というメーカー側の制限がついたものでした。そのため、共同購入では冷蔵となるマルセイバターサンドは企画できず、最初の企画は「ストロベリーチョコ」でした。六花亭の企画要望の声と一緒によかったね要望企画チラシで取り扱いしましたが、支所のおすすめ活動も後押ししてくれ、エフコープで5,557点の利用がありました。
しかし、私の中では組合員の要望の多くはマルセイバターサンドなので六花亭と繰り返し商談を重ねて、繁忙期を避けてようやく企画にこぎつけました。組合員の要望の声は2つか3つ掲載し、コマ枠も大きく要望企画チラシで掲載しました。
当時、マルセイバターサンドは500円+消費税の価格でしたが、エフコープのみで約2万点の利用となりました。ここで、ようよく六花亭もエフコープの利用実績に一目置いていただいたようで「エフコープさん、すごい数なんですね。1週間でですよね」とびっくりされていました。
その後は、商品や取り扱い時期などの制限は無くなりました。
こういった話だけを聞いていると、高飛車なメーカーなの?と思われるかもしれませんが、商談の前後の時間で六花亭本店の従業員の接客を見ていましたが、非常に丁寧で、お客様の立場に立った対応をされているのが印象的でした。問屋を間に入れず直取引にこだわるのも「自分たちが製造した商品は最後まで責任を持ちたい」という思いがあるためです。問屋を経由すると最終的に何がどこにわたっていったかが把握できなくなる、過去に苦い経験もあったようです。
六花亭との問屋を介さない、直取引を始められたことは大変なことも多かったですが、商品担当になったばかりの私には非常に貴重な経験となりました。