No.2 まずは気楽に入門。誰でもワインと仲良くなれる。

ボトルやグラスの、意味ある形。

難しく思われがちなワインですが、分かりやすい選び方もいくつかあります。たとえばボトルの形状。何年も熟成させておいしくなるワインは、ボトルの肩がしっかりと張っています。ここに澱を溜める役割があるんです。澱というのは色素や酵母の死骸なので、なるべくグラスに入らないよう注ぎますが、肩の部分に溜まるので都合が良いのです。逆にストンとしたなで肩のボトルは、長期熟成を前提としていません。すべてが熟成できないとは言い切れませんが、基本的に、すぐに飲んでおいしいワインだと思って良いでしょう。コレクションするなら肩の張ったボトル、すぐに飲むワインを買うなら、なで肩ボトルを選ぶと良いと思います。また、瓶底の窪みも澱を溜めるためにあるので、深いものほど長期熟成向きなんです。

ワイングラスにも種類があります。白ワイン用は、冷たいうちに召し上がれるよう小さめに作られています。丸っこく作られているのは、ブルゴーニュ地方の赤ワイン用です。香りを中に溜めて楽しむため、こんな形をしています。注いだワインを中で回して、香りを充分に立てて楽しんでください。少しスリムなのはボルドー型。飲んだ時に、ワインが舌のどの部分に最初に当たるかが計算されています。ボルドーの赤ワインは渋味や酸味がしっかりしているので、それらの特徴をより感じやすい、舌の両側部分に液体が落ちるよう作られています。

ちなみにシャンパングラスは、底にわざと小さな傷をつけてあります。そこから泡がきれいに上がるんですね。
いずれのグラスも、手の温度がワインに影響しないよう、なるべく脚の下のほうを持って飲みます。ボウルを手で包んで、温めながら香りを楽しむブランデーとは、逆ですね。

PJワインセラー内の10万本を超えるワインたち。フランス、イタリア、スペイン、オーストラリア、ドイツ、アメリカと6カ国のワインが揃う。安副社長は、それらすべての国に出向き、展示会やシャトーを訪ねる日々を送っている。
左が白ワイン用、右の二つがボルドーグラス。ブルゴーニュ型は、ボウル部分が丸く大きく膨らんでいる。どれか一つは持っておきたい。生協で取り扱っているワインはどれも、気軽に飲めるテーブルワインばかり。日々の食卓で楽しんでほしい。
ワイングラスを持っていない場合は、どうすれば?「ワインの味わいは、グラスによって変わってしまうので、なるべく縁の薄いもので飲むと良いでしょう」と話す安副社長。

味の決め手、素材からアプローチ。

好みのワインに出逢うために、ブドウ品種から探るというのも、良い方法だと思います。材料がお料理の味を左右するように、ブドウ品種も、ワインの味わいに大きく影響します。ブルゴーニュワインは、ピノ・ノワール100%ですが、ボルドーで作られるワインは数種類のブドウをブレンドします。たとえばカベルネ・ソーヴィニオンやメルロをメインに、補助品種(色や香り、まろやかさを加えるために使う)としてプティヴェルドーとカベルネ・フランを入れるとか。ブドウ品種をラベルに書くためには、国によって基準は違うものの、70%とか80%以上の比率で使われている必要があるので、ラベルに名前が載っている品種が、味の大部分を決めていると思って良いでしょう。
ですから、「おいしい!」と思えるワインに出逢ったとき、メインに使われているブドウ品種を覚えておけば、次に選ぶときの参考になりますね。

まずいワインなんて、ないかも知れない。

昔はワインと言うと、経済的に余裕のある年配の方が飲まれるもの、というイメージがありました。今ほど手ごろなワインがなかったのでしょう。今はマーケットが成熟したのか、質がどんどん上がっています。仕入れる人も、値段だけでなく品質を見るようになり、フランスに限らずすべての国で、作る方たちも生産力より質の良さを追求する傾向があります。ワイン文化は今や、世界中に拡がっているんですね。生産者の方を訪ねると、皆さん一生懸命作って、自分たちの名前で責任を持って売っている。彼らを見ていると、まずいワインなんて一つもないのかも知れない、と思うんです。あとは好みで、どんな方にも、必ず仲良くなれるワインがあると思います。

お食事との合わせ方も、大切です。よく「魚には白、お肉には赤」と言われますが、濃いめの煮魚なら、赤ワインでも合いますし、甘い白ワインがエスニック料理と好相性ということもあります。共通点を見つけるというのも一つの選び方。香りが似ているとか、スパイシーであるとか。献立との相性を考えるのも、楽しいですよ。白菜のお漬物にだって、合うワインはあるんですから(笑)

普段から、飲むのはワインばかりという安副社長。「ボルドーはブドウ品種も多種多様なので難しく思われがちですが、今後も組合員さんにも楽しんでいただける良いものを、ご紹介して行きたいです」。

インタビュー:牛島彩  写真:門司祥(スタジオCOM)

PROFILE
安 映子
Eiko An

パンジャパン貿易株式会社
PJワインセラー取締役副社長

貿易会社を営む父の影響で幼少から海外に興味を持ち、英語、中国語を学ぶ。西南大学卒業後、東京の航空会社を経て父の経営するパンジャパン貿易へ。フランス食品振興会認定コンセイエ。全日本ソムリエ連盟認定ソムリエ。日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー。

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