No.1 ワイン、土、道具。ちょっと知れば、もっと楽しい。

ワインとともに、道具も進化してきた。

1990年代後半に始まったワインブームをきっかけに、日本にもワインはすっかり定着しました。以前は、少し余裕のあるご年配の方が嗜まれるお酒のイメージでしたが、今では居酒屋さん にもワインが並び、若い方がよく飲まれていますね。

家でご家族やお友達と、ワインを楽しまれる方も増えました。そのための道具も進化しています。たまに、一度抜いたコルクを戻そうとして「入らない」とおっしゃるお客さまがいらっしゃいますが、コルクは一度抜くと、基本的に戻りませんから、瓶内を真空にする専用のキャップを使うのが一般的です。

開栓するとき、昔はどこでもT字型のコルクスクリューを使っていましたね。あれはとても力がいるので、お父さんの出番だったと思いますが(笑)、今はどなたでも簡単に、楽に開けられる道具があります。
そういった道具を持っているだけで、ワインはもっと楽しくなりますね。より多くの方に親しんでいただきたいと思います。

【写真左】テコの原理で軽く開けられるソムリエナイフは、テコ部分が二段になっているものが楽。左右の羽を下ろすだけで開くウイング型には、キャップシールを剥がす刃がついているものがあり、便利。いずれも1000円前後から。
【写真右】ワインキーパー、ワインポンプなどの名で市販されている保存用キャップ。瓶内を真空状態にできるため、2~3日はおいしく飲める。
「生協さんからの最初のご依頼は、他商品と相性の良いワインをご提案する仕事でした。鶏の炭火焼、肉じゃが、白菜のお漬物。意外ですか?和食にも、ちゃんと合うワインはあるんですよ」と話す安副社長。
北九州にある店舗奥には、10万本のワインを抱くセラーがあり、一般の買い物客も自由に出入りできる。壁に冷水を通す管を張り巡らせた庫内は、常時18℃前後に設定されており、夏場もひんやりしている。

実は、ワインを育てるのは土。

フランスで古くからワイン造りが盛んな理由の一つは、その土壌がとてもワインに向いているからです。砂や小石、泥、粘土質など、幾重にも重なった地層が、それぞれ違う栄養分を持つため、根がさまざまな栄養分を吸収するんですね。だから、複雑な味わいを持つブドウが育つのです。肥料を撒いてしまうと、根は肥料を求めて横に延びてしまいます。そこで、根を下に深く伸ばすため、敢えて肥料を与えず育てます。土壌の質がそのままブドウに、ワインに表れるのです。

ですからフランスでは、国が定めた、畑そのものを評価する格付けがあります。フランスワインと言えばブルゴーニュ地方とボルドー地方のものが代表的ですが、今回生協さんで取り扱っていただくボルドーワインでは、いちばん高い特級畑をグランクリュ、1級畑をプルミエクリュなどと呼び、一定レベル以上のワインであれば、畑の等級までラベルに記載されます。道1本隔てただけで、ワインの価格や評価に大きな差があるところも珍しくありません。

ラベルはワインを、雄弁に語る。

ワインブームが長く続いたおかげで、手ごろな価格のイタリアワインや、新世界ワイン(チリ、アメリカ、オーストラリアなど新興国のワイン)は、日常的に飲まれるようになりました。ラベルのデザインも、斬新なものや愛らしいものが流通し、贈答品としても人気を集めています。でも、フランスワインは昔ながらの、白地に文字とエンブレムとシャトーが描かれた、伝統的なおとなしいラベル(フランス語ではエチケット)を使用しているものが多いですね。

フランスワインのラベルに文字が多いのは※、ランクの高いワインほど、国が定めた表示義務 が多いからなんです。だからと言って、文字がたくさん書かれているワインが良いワインかと言うと、そうとも限らないんですよ。表示義務のないことも自由に書けますから(笑)、そう単純に行かないところが「フランスワインは難しい」と思われる一因かも知れませんね。

※フランスワインは現在、品質を保証するための法律によりAOC、ヴァン・ド・ペ(地酒)、ヴァン・ド・ターブル(テーブルワイン)の3段階に格付けされています。日本で飲まれているフランスワインの多くは最高ランクのAOCですが、この呼称を得るには全国原産地名称協会(INAO)が決め、農務省が承認した大変厳しい条件を満たさなければなりません。AOCワインには、「原産地名称」「瓶詰元名称」など、他の格付けより多くの表示義務があるため、ラベルに文字がたくさん記載されています。

ラベルに畑の格付け「グランクリュ」の文字が。ボルドーで最高評価である「特級畑」のブドウが原料であることが分かる。

インタビュー:牛島彩  写真:門司祥(スタジオCOM)

PROFILE
安 映子
Eiko An

パンジャパン貿易株式会社/PJワインセラー取締役副社長

貿易会社を営む父の影響で幼少から海外に興味を持ち、英語、中国語を学ぶ。西南大学卒業後、東京の航空会社を経て父の経営するパンジャパン貿易へ。フランス食品振興会認定コンセイエ。全日本ソムリエ連盟認定ソムリエ。日本ソムリエ協会認定ワインアドバイザー。

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