CRM推進部 上田 千歳
作るものに自信のある生産者のみなさんは、必ずと言っていいほど
「組合員さんに産地を見に来てほしい」と言われます。
群馬県嬬恋村は、九州から、ちょっとそこまで訪問することがかなわない土地です。だからこそ、産地の情報をこちらでお届けしたい!
日本一おいしいと自信をもって私たちに夏場のキャベツを届けてくださるみなさんを今回はご紹介します。
赤い丸の部分が群馬県嬬恋村
点検に同行しました
生協版GAP点検を農産商品部の田中担当が嬬恋村にて行いました。
そもそも広い土地に(米以外の)単一作物が植わっていることに慣れていない北部九州在住の上田には圧巻の景色。
代表の前田康則さんのお宅に訪問するまで、車でどんどん高台に上っていきます。嬬恋村の周辺はジオパークに指定されており、大変自然豊かな土地です。
標高が高いため、ゆるやかな上りが続きます。耳をキーンと鳴らしつつ到着した前田さん宅ではカッコーが鳴いていました。
右から前田さん、黒岩今朝司(けさじ)さん コープ九州農産商品部 担当の田中
前田さんとともに同席していたのが物流を担当する黒岩さん。これまで、生産者の点検に配送に携わる方がいらっしゃったのは初めてで、軽く驚きました。
後になって前田さんから説明がありますが、配送くださっている黒岩さんも生産団体のファミリーです。「いくらいいものを作ったとしても運んでもらえないと嬬恋から出られない」
と前田さん。
今年は昨年の改善目標だった、
1.商品事故対応を含む危機管理体制及び手順を記載した文書があり、対応を記録については、組合員からいただいた声について保管をされていること。
2.農薬を使用する際には、周辺住民への告知、注意喚起を行うことについては、黄色の旗で相互確認しあう約束で運用されていること。
課題はクリアされていました。
点検中もずっと前田さんはこれから数時間先の天候や気温を気にしていました。
点検終了後 前田まさ代さんと上田 前田さんのお庭です
日本の夏場のキャベツの2分の1を供給する群馬県嬬恋村。浅間山の火山灰が堆積した黒ボク土は高原野菜の栽培に適しており、戦後の洋菜を増産する国の政策により、一大産地として成長しました。
最適な土壌、冷涼な気候、潤沢な水「キャベツづくりで自分たちに敵う場所はない!(石田さん談)」と自慢の土地です。
九州の生協が生産をお願いしている「ピュアウェーブ21」は生産者5名(代表)を抱える生産者団体です。代表の前田さんと、前田さんの同級生で長い付き合いのキャベツづくりの名手石田さんをはじめとする2代目農家のみなさんと、さらに息子世代の3代目のみなさんで構成されています。
点検を行いながら今年の作況について伺いました。
「今年は3月と4月が寒すぎて、梅の花がなかなか咲かなかった。梅と桜が一緒に咲くような状況だった。4月6日に雪も降り異様だった、が順調に7月20日にはL玉が出せるように仕上げています」とのこと。
前田さん「世界情勢が悪化してからというもの、種をはじめ肥料や資材の高騰もあり、続けて行くのは大変だが、「食べたい」と言ってくれる人がいる間はやめるわけにはいかない」
コープ九州との商談では、1/4玉での供給など、新たな形態で購入いただきやすく、生産者が一方的に損害を被らない形を探っていこうと、話を行いました。
嬬恋村が見渡せる丘に立つ前田さん
水や土について
「キャベツを育てる上で欠かせない水が潤沢なのも嬬恋村の特長です。200か所を超える水道が点在しており、1,000リットルを1分で汲み上げられる水圧がある水道もあります」
キャベツ圃場の土の色が黒いことが伝わるでしょうか。
火山灰を含んだ土は保湿力に優れており、苗を植えたあと、水をまかなくても活着するくらい保湿力があるそうです。
また、朝露がたくさん降りるため、収穫時キャベツを抱える作業者はびしょびしょに濡れてしまうとのこと。
キャベツづくりに適した土壌、夏場でも冷涼な高原の気候、きれいな空気と豊富な水
腕のいい生産者が私たちのキャベツを育んでくれています。
この後、前田さんの長きにわたる相棒である石田秀雄さんの圃場にお邪魔しました。
この日も日暮れ前、ぎりぎりまで作業をされており、遠いまっすぐな道をトラクターで登場されました。
天候のこと、成長を見極めながら行う作業のこと、圃場ごとに異なる使用肥料について、加工用のキャベツと通常のキャベツの違いなど、短時間で多くのことを説明いただきました。
とにかく見渡す限りキャベツ苗。生育度の違う畑の管理を行われいます。
農業について学べる群馬県農林大学校にて、講師も務める石田さん
「俺たちが出るより若者が出た方がいいよ」などと笑いながらお話くださいますが、何より迫力が違います。何万個も育てあげ、私たちに届け続けてくださっている名人たちです。
石田晃大さん
秀雄さんの息子さんは、大学で農業を学び実家に戻ってこられた3代目です。現在家族やスタッフの皆さんと日々、早朝からキャベツづくりに励まれています。
石田さんの圃場に伺ったとき、「点」に見えるほど遠くで植え付けをされていました。
大学では、キャベツ畑に生える雑草について研究された、とのこと。
会食の席で率直に言ってどう?うれしいだろ?と周りに問われると、秀雄さんは「そりゃ倅がいてくれてうれしいよ」と、控えめな口調で大きな笑顔です。
「秀雄さんには怒られていますけどね」と晃大さん。
戸部悠希さん
3人の若者の中で一番若く一番ベテランの悠希さん。大変なことは何ですか?の質問に「早起きです…」と、若者らしい回答が。
8月の朝には4時に起床して、畑に出るそう。圃場のほかのスタッフが6時ごろ畑に出てくる前に、その日の作業の段取りを考えて準備する、とのこと。
植え付け後の畑では、毎日キャベツが育っていくため、当然お休みはありません。
「いつ休むの?」の質問に、冬です!と笑顔で答えてくれました。
一昨年は冬場長崎県に仕事に来られていたそうで、長崎は楽しかった!とこれまたいい笑顔でお答えいただきました。
戸部敬輔さん
大学で農業を学び、商社に就職をして、流通を学び、そこでソムリエの資格も取得されて退社。実家に戻って現在キャベツを生産、販売会社も経営されています。大学も就職も、キャベツ農家を継続するためのスキル取得のための選択だったとのこと。
「自分で売るのは難しい、だからこそ、いろいろと学んで戻ってこようとはじめから思っていました」
現在は弟さんも一緒に家族とスタッフのみなさんと生産、販売を行われています。そして戸部さん、マタギです。
1970年から鹿の数は7倍に増えたそうです。キャベツを食べるシカは栄養で出産回数が増えたそうで、猟師が必要だと感じている、と。冬眠明けの熊の猟の話など、楽しく聞かせていただきました。
この日、生産者のみなさんの日頃のキャベツの食べ方や、前田さんが畑で収穫作業を長く行っていると「高騰するの?」と周りの生産者がざわつく、という話や、包丁を入れた瞬間の「ザクっ!」という音から違う、という話や、
ここでは書き尽くせないほど、多くのお話を伺いました。
「俺たちは作ることができて、運んでくれる人も、流通してくれる人もいる、仲間がいる。消費者が食べたいものを食べられるということは奇跡だよ。何でそれができるのかを考えてほしい」
と若い生産者たちに話す前田さんは「若者が来年も種が蒔けるように」と力をこめます。
出荷したキャベツの畑まで追跡できるキャベツです。一度食べたら絶対、またこのキャベツ食べたい、と思ってもらえる自信を持たれています。
「食べてくれる人と直接つながれるから生協と取り引きをする」こう言ってくださる
生産者のみなさん。ピュアウェーブ21のキャベツは7月、8月の企画です。カタログで見つけた際は、ぜひご注文ください。
これからも、コープウェブでは嬬恋村、北軽井沢の最高にかっこいい生産者集団の情報をお伝えしたいと思います。