コープ九州食品商品部 渕上智咲
コープ九州食品商品部 下津浦あや
今回はコープの黒酢製造メーカーでおなじみの坂元醸造への訪問を報告します。
一面に広がる壺畑。トータル52,000本の壺があり
列ごとコンピュータで管理されている
鹿児島県霧島市福山町には10万本の壺がありますが、そのうちの5万2千本を坂元醸造が管理しています。
質問したところ、昨今の、豪雨や気温上昇などの天候の影響は受けないとのこと。昔から変わらず、仕込んでから発酵・熟成を掛け約1年で黒酢はでき上がります。
壺酢は、1800年代、江戸時代後期に始まりました。①温暖な気候 ②豊富な米 ③良質な地下水 ④薩摩焼 このような地理的・歴史的背景があります。
大正時代から昭和初期にかけて、石油から合成してできる安価な合成酢が出回り、壺酢は衰退します。また、太平洋戦争が起こり、原料の米が入手できず、24軒あった醸造所は次々に廃業。坂元醸造は原料を米から芋にかえ、壺酢づくりの技術を守ったそうです。
1975年、壺酢の名称を「くろず(黒酢)」と命名したことが、現在の黒酢ブームの発端になりました。
環境保護が叫ばれているいま、環境に優しいスローフードとして注目されています。
黒酢の製法を紹介します
・原料は蒸し米、米麹、地下水の3つだけ。米麹は、みそや醤油と同じ黄麹を使用。
・くろず仕込みは、春(4~6月頃)と秋(9~10月頃)の年2回。
壺の中に、混ぜ麹、蒸し米、地下水の順番で原料を入れ、最後に水面を振り麹(水に浮くように乾燥させた米麹)で覆う
仕込みが終わると壺の中で、糖化→乳酸発酵→アルコール発酵→酢酸発酵が起こり、そこから熟成。糖化から酢酸発酵までの間、毎日醸造技師の方が自分の子供を見るように、壺を見回っている。熟成は半年~5年ほど。熟成の間は、攪拌作業を竹の枝を使っておこなう。
この作業も江戸時代から続く伝統的な技法です。
熟成期間が長くなることで、液色は濃くなる。
実際に発酵中のポコポコという音も聞かせていただきました。技師の方は、一番は香りで黒酢の良し悪しを判断しているそうです。
後継者不足などの心配はなく、多くの若い方が醸造技師を目指して入社される坂元醸造。
醸造技師になるには10年ほどかかるそうで、試験に合格してやっと技師になれるそうです。
先輩後輩関係なく、成功事例などは共有し高めあって作業される、とのこと。
醸造技師の方が、「壺は我が子を見るように毎日音を聞いたり、香りを確認したりしています」と言われていたのがとても素敵で印象的でした。
実際に製造現場に足を運ばなければ学べなかったことをたくさん吸収できた、貴重な時間となりました。